Killing Beauty
姫宮未調
取調室のかぐや姫
「……何度も申し上げている通り、私は知りません」
コンクリートのグレーな空間にあまりにも似つかわしくない少女が、警察官と机を挟んで対峙していた。
人形と違えそうなほどに精巧な、蒼き瞳の銀髪美少女。名をアンジェリーク。その隣には影のように寄り添う、焦げ茶色の髪と瞳をしたメイド。
目の前にいるのは武骨な刑事が三名。アンジェリークと机を挟んで対峙しているのはダナス警部。両脇に部下。
「そうは言ってもですねぇ。居なくなった男性は皆、『貴女に会いに行く』と明言しているんですよ」
「だから私は会っていないのです」
「見たこともないんですか? 」
「街中でお見掛けしているかもしれませんが、知り合いでもありませんし」
取り調べは平行線で難航していた。
「別に私らは貴女を殺人犯として任意同行願ったわけじゃありません。進展がほしいのですよ、アンジェリークお嬢様」
アンジェリークは溜め息をつく。
「……ナンナ、この方々は私に会いに来ていないですよね? 」
ナンナと呼ばれたメイドが、恭しくお辞儀をする。
「警部どの、わたくしがお話しても宜しいでしょうか? 」
「ああ、構わんよ。ナンナ、君も協力してくれ」
「では失礼して……」
一度瞳を閉じ表情のないまま、また瞳を開く。
「まずはお話を整理させて頂きます。警部どののお話から、一週間前の事件が始まりと仰有っておられましたね? 」
「うむ、一週間前から。そして五日前、三日前と昨日の二日おきの同年代の男性行方不明事件。同一犯の可能性が高いとお上も考えていた」
「残念なことに、次々と死体で発見されたので御座いましたね」
「ああ、場所は違えど、皆同じ特徴を有していた。……失踪当日に女性と情事を行った痕跡があった。そこから聞き込みの際、女性関係を洗ったわけだ」
そこで一度、アンジェリークに目をやる。
「……ご家族様やご友人様、知人様から出た女性の名前がアンジェリークお嬢様であったと」
警部は重々しく頷く。
「アンジェリークお嬢様がビッチの真似事をするなんて、思っちゃいないんですがね……。こうも皆さんがお嬢様の名前を出しては、お話を伺わなければならない運びになったわけです」
黙っていたアンジェリークが口を開く。
「……仕方ないですね。まぁ、出向かせていただく前に警部がいらっしゃるのはわかっていたのですが」
意味深な発言をする。
「ナンナ、そのお話を含めて、私へのここ一週間の来訪者について警部にお聞かせして差し上げて」
恭しく主にお辞儀をした。
「……畏まりました」
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