第7.1話 将来への不安


「ウフッ…ウフフフッ…」


 夜も更けた自室のベッドの上…パジャマ姿で大きな青いジャケットを着た熊のぬいぐるみを抱きしめご満悦のシャルロット。


「はぁ…毎日、愛しのハインツ様に会えるなんて…ウフフフ…ああ…早く明日にならないかしら…」


 数日前…ハインツと事故とは言えキスをしたシャルロットは言葉使いも仕草もより女の子らしくなっていた。

 恍惚とした表情でぬいぐるみに何度も頬ずりをし、何度もキスをする。

 彼女は熊のぬいぐるみをハインツに見立てているのだ。


 その様子をわずかに開けたドアの隙間から見ている者がいた…シャルル王とエリザベート王妃だ。


「ぬぅ~…決闘が終わってからこっち、ずっとあの調子だ…少し前までは『お父様だ~~~い好き!!』と言ってくれていたシャルロットがあんな男に惚れてしまうとは…」


 歯噛みし目を潤ませて情けない声で呟くシャルル。


「仕方ないでしょう…?子はいつか親離れするものなのですから…」


 やれやれこの親バカは…とため息を吐くエリザベート。


「…ただな…俺は不安なのだ…モイライの言うがままあの子を女の子として育てててきたが、いつかは自分が男である事を知る時が来る…

その時あの子の心はどうなってしまうのかと…」


 不意に遠い目をするシャルル。


「…そうですわね…その時が来たらきっと私達はあの子にこれ以上無い程恨まれるのでしょうね…」


 王妃も同意する。


「シャルロットよ…運命に抗えなかった父と母を許しておくれ…」


 本人には聞こえるはずも無いのだがそう言わずにはいられなかった。


 幸せそうにぬいぐるみとベッドに横たわる娘を背に二人はその場を離れた。

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