エムクマとはりこグマと6にんのハロウィンおばけ
星村哲生
「エムクマとはりこグマと6にんのハロウィンおばけ」1
すっかり秋らしくなったある日のこと。
くびにまえかけをつけた、クマのぬいぐるみ はりこグマは、一人で山にきのこやあけびをとりに出かけました。
いつもはオレンジ色のクマ、エムクマもいっしょなのですが、今日はエムクマは村長のレオじいのところへいっています。
はりこグマは木のねもとを ちゅういぶかく さがして たべられるきのこを。
木にからまっているつたをさがして、あけびをとります。
あっというまに もってきたバスケットいっぱいに きのこやあけびがとれました。
「これだけとれたら、きのこはシチューにできる。
あけびの みはエムクマとたべて、かわは にがいから ながクマにあげよう」
あたりはすこし うすぐらくなってきました。はりこグマは きたみちをもどっておうちにかえります。
がささっ
と、うしろでものおとがしました。
「だあれ? エムクマ? それともながクマ?」
はりこグマがふりむくとそこには――――
「「「「「「トリック・オア・トリート! おかしくれないといたずらしちゃうぞ!」」」」」」
うごく
「きゃあ!」はりこグマはおどろいて しりもちをつきます。
うごく
せのたかさは はりこグマよりすこし小さいくらい。
麻のふくろに穴が二つあいていて、そこかららんらんと光る目がのぞいています。
「き、きみたちはだあれ?」
「おれたちか、おれたちはおばけだ。こうしてハロウィンになるとあらわれる」
「ハロウィン?」
「しらないのか。10がつさいごの日のおやすみの日。おばけのかっこうをして……
じゃないや、おれたちみたいなおばけが いえいえをまわって おかしをもらえる すごくいいひだ。
さあ、おかしをよこせ」
はりこグマは バスケットのなかをさがします。が、おかしはありません。
「いまは きのことあけびしかないよ。
きのこは火をとおさないとたべられないし、あけびのかわはすごくにがいよ」
「なんですって? それってごはんのあとおかあさんに のまされるくすり……
じゃないや、すごくにがいの? だったらいらない」
「おかしは いまもってません」はりこグマはすごくこまったかおをします。
「おかしがない? だったらいたずらだな」
「いたずら? なにするの?」
「そうだな、おまえのいえにいって ごみをいえのまえにちらかすぞ」
「ええっ?」
「そうだ、それにぎゅうにゅうを テーブルにこぼしても しらんかおするぞ」
「そんなあ」
「それに、おもちゃをだしっぱなしにして、ちゅういされてもかたづけない」
「おうちにかえっても 手をあらわないぞ」
「あさおきても かおをあらわないわ」
「ねるまえに はもみかがない」
「クレヨンでいろんなところにらくがきするわ」
麻のふくろのおばけたちは のびたりちぢんだりして くちぐちにいいます。
そうじもおかたづけも かおをあらうのもはみがきもだいすきなはりこグマは みちにしゃがんで ちぢこまってしまいました。
おばけたちは はなしをつづけます。
「それにだ、おまえにも おばけになってもらう」
「おばけ?」
「そうだ、こうしてこむぎこのふくろをかぶって……
じゃないや、おれたちみたいに ふくろおばけになってもらう」
「それで、おれたちといっしょにいえをまわって おかしをもらうんだ」
「まいにち さんどさんどおかしがたべられるんだ。こんないいことはないぞ」
「トマトとかピーマン、しいたけをたべなくてもいいのよ」
「まいにち おかしばっかりだなんて そんなのやだ。
サラダもピクルスも やさいときのこたっぷりのシチューも なんでもたべたい。
それに、おばけなんかになったら エムクマといっしょにくらせない。エムクマにきらわれちゃう……」
はりこグマは かおにてをあてて しくしくなきだしました。
「……おい、ないちゃったぜ」
「ただ、おかしがもらえればいいんだけどな」
「あーーあ、なーかせたーー」
「いっしょになってなかせたのは ぜんいんいっしょだろ」
「どうしようか」
おばけのひとりが はりこグマにいいます。
「よし、まだハロウィンには日にちがある。ハロウィン とうじつまでにたべきれないほどのおかしをよういしろ。
そうすれば――――」
おばけがいいおわるまえに はりこグマは なきながらいえにかえってしまいました。
「あーあ、かえっちゃった」
「それに、バスケットおいていっちゃったよ」
「もっていってやろうぜ」
おばけたちは 木のかげから そらいろのておしぐるまをひっぱってきました。
がらがらがら がらがらがら
でもあちこち クレヨンでらくがきしてあったり どろんこでよごれています。
それに、らんぼうにつかっているからか、しゃりんがとれそうでした。
おばけたちはバスケットを ておしぐるまにつむと はりこグマのあとをおいました。
はりこグマは いえにかえりました。さきにかえっていた エムクマは ないているはりこグマをふしぎがります。
「どうしたの? はりこグマ」
「あっ、エムクマ きいてきいて。
きょう やまにいったら おばけにあったの。
おばけに おかしくれないと いたずらするし おまえもふくろおばけにするっていわれた」
「いたずら? それにおばけにする? それじゃ おかしをよういしないと」
「でもいっぱいよういしないと。やっぱりおばけにされちゃう」
「うん、できるかぎりいっぱいよういするよ」
こつん
そとで ものおとがしたので エムクマがげんかんのドアをあけます。
そこには きのことあけびがはいったバスケットと てがみがおいてありました。
てがみは クレヨンでかかれていて じの大きさが ひどくふぞろいでした。
それにところどころ じが はんたいむきのもありました。
エムクマはてがみをよみます。
【はりこ>゛ま え おかし お >れゐみたいだから おばけに わ Jないで やゐ
そのかわし| おかし わ なゐだt| た>さん よおいしΣ
はろいんの とおじつに おかし お もちいこ| い> まっていΣ
J゛ゃあな おかし おばt|】
「どうしよう、なるだけ おかしをたくさんよういしろって。
ひょっとしたら、よういできなかったら おばけにたべられるのかな」
はりこグマは ふあんでいっぱいです。
「うん、じゃあ おかしをつくるから ざいりょうをもらいにいこう」
エムクマとはりこグマは そらいろのておしぐるまをおして でかけました。
「あっ、ここにクレヨンでらくがきがあるよ」
ふうしゃごやのかべ、ひくいところに あちこち ねこやさかな、はなやきかんしゃ。
それに はちのすワッフルや はちみつのびんの らくがきがありました。
じめんには さくらの花びらににた ちいさなあしあとがいっぱいついています。
ふうしゃごやには ワオキツネザルのフリッカがいました。
フリッカはふうしゃごやで こむぎをこなにするしごとをしています。
「こんにちは フリッカ。どうしたの?」
「ああ、エムクマとはりこグマ。たいしたことじゃないんだけどね。
こむぎの麻のふくろを いくつかもっていかれたんだ。それより、なにかようかい?」
「うん、ハロウィンでおかしをおばけにくばるんだ。ざいりょうのこむぎこをくださいな」
「そうか、ほらこれがこむぎこ。で、こっちのがふすま、ブラン入りのこむぎこだ。えんりょなくもっていって」
「「ありがとう」」
「こんにちは エムクマとはりこグマ」
そこに白いははねこがきました。
「いつかは、どうもありがとうございます。うちのこどもたち見ませんでした?
ハロウィンのことを はなしたらおおさわぎして」
「ああ、それならだいじょうぶだ。おうちにかえるだろう。それに、なにをしてるかはだいたい けんとうがつく」
フリッカはふうしゃごやのすみ、こむぎのふくろをみます。
そこにはまるくきりぬかれた麻のきりくずが、いくつもおちていました。
「そうだ しろねこさん。もりに ふくろおばけがいたんだ。それもひとりじゃなく6にんも。
しろねこさん、もりのまるたごやにすんでるでしょ。あわないように きをつけて」
「まあ、ふくろおばけ? それも6にん? なるほど、きをつけます」
いえにもどった エムクマとはりこグマは おおいそがしです。
じぶんたちでつくるだけでなく、いろんなところにいって おかしをつくってもらうようにおねがいにいきます。
「ハロウィン? それはいい、いっしょにおかしをつくろう」
りっぱなたてがみをもつ大きなバーバリアンライオン、おかししょくにんのテオブロマは かれなりのえがおを エムクマたちにむけます。
「まあ、ハロウィン? じゃあいっしょうけんめいつくらないと。ありがとうございます」
ねこのおばあさん メイプルグランマはうれしそうです。
それにたれみみうさぎのロップ、きこりのジゼポ、りすのエアシリィ。
ミーアキャットのパンやさんは いっかそうでで おかしつくりにさんかします。
それにむらのじゅうにんが おおぜいあつまって、つくったおかしを むらのひろばに もってきました。
おかしのしゅるいは、はちのすワッフル、くらやみブラウニー、ピーナッツキャラメル、かえでスコーン、どんぐりクッキー、こねこがたチョコレート。
それに、はんじゅくカスタード、サバンナのいきものビスケットと しゅるいもりょうも たくさんありました。
まちのおんなのこたちは できたおかしを ちいさなふくろにつめて リボンをかけていきます
「おい、あんなにおかしをつくってもらえたぞ」
「おばけのちからってすごいね」
「あんなにたべきれるかな」
「ておしぐるまでもってかえろうぜ」
「あしたがたのしみだな」
「まいにちハロウィンでもいいのに」
6にんのふくろおばけたちは いえのかげからひろばをみていました。
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