第26話
常に最悪を想定して行動するように。
そう言われたのは、富士での師団検閲前に班長からだった。訓練のための訓練はするなと中隊長から常に言われ続けていたのにも拘らずだ。それはどういうことだろうと考えた。
たぶん――それを理解できたのは夜襲という状況が発生したときだろう。小体長の怒鳴り声を背に、仮眠と休憩を取っていた全ての人員が跳ね起きて即座に警戒態勢と迎撃に当たった。明かりは当然無い、数メートル先の人物が友軍か敵軍かも分からぬ中で数時間もその状態は続き、結果撃退成功となった。
十三日にも及ぶ状況下、想定における検閲が終了してから聞いた話だが――。隣で布陣していた中隊は壊滅判定を受けたらしい、それだけではなく――備品の喪失で捜索やら何やらと”最悪”がいくつも重なった。
ただ運がよかっただけかもしれない、あるいは指導や指示が徹底されていたから自分らの中隊は”概ね良好”と判されたのかもしれないが――。
人生、最悪とは落とし穴のように、あるいは何気ない日常の中にある甘い罠として存在しているのかもしれない。
「まだ、何か買うの……?」
買い物をしにいくと言ってはいたが、その主目的は俺のものであったはずだ。しかし、今俺が店先で壁を背に荷物を持たされて待ちぼうけを食らわされているのはなぜだろうか? その答えは簡単で、安請け合いした結果カティアとアリアが色々なものを見て周り、俺に何かを買わせようとしてくるからだ。
アリアはまだ良い、前はカティアの面倒を見てくれた恩も有るし、なんだかんだとミラノに対して色々と言って便宜を図ってくれているからだ。だがカティアよ、確かにご機嫌取り名目で何か買うとは約束したけれども――その、買いすぎじゃね?
買わされたのは服や装飾品になりそうなリボンだ。しかも今着ているのとまったく同じの、予備か?
何でも良いのだけれども、アリアが髪飾りに興味を惹かれたが為にカティアもそっちに引っ張られて更に拘束されている感じだ。
「家の修理――薮蛇だったかなぁ」
ミラノには黙っていて欲しいとお願いしてしまったが為に、強く出る事ができない。待たされている間にストレージの中身を確認しているが、背嚢が他にもいくつか準備されていたので買う必要がなくなっている。詰め込む物は後で考えるとしても、出費が減ったのはありがたい話だ。
他にも、エンチャントだのクリエイトだのと、様々なシステムが増えてきたので全部再確認しておく。それでも確認動作が全部タッチ式なので、他の人から見ればただの変人にしか見えないだろう。音声認識で操作するにしても声を出さなきゃいけないので、たとえ小声であったとしてもぶつぶつと何か言っているように見られるので仕方が無い。
ステータスもなんか補正効果が出てるし。”気分高揚”とか”待ちくたびれ”とか出てる、喧しいわ。自分の状態を確認できるのは分かっていても、廃人レベルでやりこんで成長させるような事を自分に対してやりたいとは思わない。何が悲しくて経験値効率が良い時に頑張る! みたいに調整しなきゃいけないのだ、自分のことで。
しっかし――
「なんか、こうやって色々出来るようになってるのが分かってても、あんまり使いたく思えないんだよなぁ……」
頭が固いか、あるいは考え方が古いのかもしれない。今まで生きてきた中で確立してしまった生き方を大事だと思うがために、新しいものを取り入れづらいと言うのか。たしかに、魔法が使えるようにはなっているものの、あまり行使してない上にメイン戦力は銃火器と格闘にナイフだ。魔法を戦いに用いたのだって、前回の戦いにおいてもほぼ最後あたりに自棄を起こして放った大爆発くらいだ。そもそも、日常において水を出して、お湯にする為に火を出して、熱けりゃ冷ますくらいという魔法の生活便利化が酷い。その内衣類を洗って温風で高速乾燥とかやるかもしれない。
かといって、いまさら銃を捨てて魔法に頼るって言うのもなんかアレだし、自分が今まで見てきた魔法使いのように後方から魔法を飛ばすだけという姿を想像できない。というか、想像したくないのかもしれないが。
「――時間が解決するのを待つしかない、か」
その時間というのも、”訓練と経験と理解を高めるために費やす時間”という意味であって、徒に時間を費やすという意味ではない。結局、魔法に関して新兵以下なのだから、さっさと使いまくるしかないのだ。
悩む、頭を悩ませる。そうやって居ても時間の経過に見合わないほど待たされ、それを自覚するたびに疲労感が増している気がしてならない。
「もう、帰ろうかな……」
リアルに彼女とか恋人が居る人に聞きたいが、女性の買い物はこれくらい遅いものなのだろうか? 俺には残念ながら女性関連の経験は無い、よって家族を除けば女性の買い物につき合わされるのはこれが初めてであった。
腕時計の時間を見れば見るほど疲れてくる、かといって店の中を見れば二人は楽しそうにしているので気安く声をかけづらい。しかも俺は周囲の店舗がどのような店か知らず、動き回ってアリアやカティアに危害が加えられたら堪ったもんじゃない。
たぶん、多くの人々から見れば相当滑稽であっただろう。あるいは同情してくれたかもしれない。ただただ俺はピエロだった。
「のう、お主」
しかし、そんな退屈で孤独な時間も終わりを告げた。誰とも分からぬ女性に、正面だというのに態々服の裾をチョイチョイと引っ張られている。ウィンドウを全て弾き飛ばして消去し、目線をふと下ろせば頭半ば位低い位置に相手の顔があった。ミラノやアリアよりは幾らか背丈が高い――同級生というイメージの強い子だ。
ただ、身なりは幾らか良さそうだ。ミラノやアリア、アルバートやミナセとばかり会っているが為、階級や身分によっての差異が身なりでは分からない事が多い。なので、こうも趣を凝らした服装を見るのは初めてだった。
「えっと、どちら様でしょうか……」
出来る限り穏便に、変な態度や対応を取らないようにしなければならない。身なりから見て、下手な対応をしたら打撃を受けそうだとより慎重に対応しようと考えたのだ。
「お主、クラインではないか?」
「――……、」
その名を出されて、俺は言葉を失った。クラインという人物はミラノとアリアの兄で、ミラノが誘拐されたときに単独で救出しに向かって――そのまま帰らぬ人になったようだ。その時期が何時なのかは知らないけれども、家の階級的に様々な所で名を知られているだろう。
そして、その名が出る度に俺は陰鬱な気持ちになるだろう。なぜなら、俺はクラインという人物ではないと否定しなければならないからだ。もしかすると期待していたかもしれない、旧知の仲で再会を喜ぶ人も居るかもしれない。それらを、全て、否定しなければならないからだ。
なので、言葉を選び、ゆっくりと、吐き出すように彼女へと告げた。
「自分は、クライン様では有りません。デルブルグ家のミラノ様やアリア様の世話になっており、つい先日騎士にしていただいた――新参者です」
「またまた、冗談が上手い奴じゃのう。そこまで瓜二つな男がそうそうおるか。
――そう言えば、髪の色が違うのう。それに、目の色もじゃな」
「ですから、もしクライン様と間違われたようであれば、期待させてしまったようで申し訳ありません。
ミラノ様もアリア様も、非常に似ていると仰ってましたし」
「うむむ、そうであったか……。済まぬな、つい友人かと思って声をかけてしまった」
そう言って苦笑しながらも申し訳なさそうに謝罪してくる女性に、自分は「いえいえ」といって許すことしか出来ない。当たり前だ、見間違いや他人の空にごときで怒る狭量でも無ければ、そんな権利を有している訳でも、予断を許さぬ状況でもないからだ。
「――後学の為に、お名前をお聞きしても宜しいでしょうか? 今後、もしかすると付き合いが有るかも知れないですし。お会いしたときに、呼ぶべき名を知らないと困りますので」
「うむ、そうじゃな。妾の名はヴィトリーと言う。宜しく頼むぞ」
「では、こちらも名乗らせていただきます。自分はヤクモと言います。先ほどの戦いで貴族の末席に加えて頂きました。
以後、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、彼女は「ほう、お主が――」と、なにやら得心がいったかのようにうなずいていた。その理由が分からずにいたが、ヴィトリーはにっかりと破顔した。
「そうか、お主が”英雄”ヤクモじゃな? お主の話はよく耳にするぞ」
「英雄だなんて、そんな――」
「いやいや、謙遜するでない。何でも幾らかの民衆を瓦礫の中から救い、公爵家の者等を救い、王家に縁のある者を救ったと聞いておる」
「いえ、本当に大した事はしてないんです。ただ出来る事をして、その結果幾人かを救えたと言うだけで」
「じゃが、考えてもみるがよい。公爵家の血筋の者を救ったというのは小さくない功績じゃ。それに、民草も国家の宝であり、財産であり、血液である。そういった者を救った――、決して無視できぬ事をやってのけたのじゃ」
そこまで言われて、俺の考えが現代に染まりすぎてるのかなと困惑しながら首筋をなでた。国民を国家の血液と言ってのけた事を”良いな”と思うけれども、それが大事に思えないのは偏屈か穿ちすぎているからなのだろうか。
しかし、直ぐに自分の過去を思い出して、災害派遣の時のように自分の思考をそちらへと傾けた。
「――それでも、人のため、誰かのために行動するのが当然ですから。
困っている人が居たなら助けるのが当たり前じゃないですかね」
「おぉ、その言い様はクラインそっくりじゃな。そして、天晴れであるぞ。
噂は幾らか聞いたりはするものの、略式叙任式で顔を見る事も出来なかったからな。前々から気になってはいたのじゃ」
なんか、こうやって話を聞いていると”やんごとなきお方”のように思えてくる。口調、服装、語りの中からある程度の誇りと言うか立場の高い人のような物言いをしているのも伺える。公爵家のクラインと顔見知りであったらしい事や、民衆の事を気にかけ功績を話題として持ち出して立派だと言い放つあたりに恐ろしさを感じた。
「あの、失礼かも知れませんが――どちらのお家の方でしょうか。
自分は記憶障害があって、その――御三家といわれる公爵家の事はもちろん、王家の事やそれに連なる家の事も分からぬのです。
後ほどミラノ様やアリア様にお聞きしますので、ご容赦ください」
「ふむ、そうであるな。では、心して聞くが良い。妾の名はヴィトリー・アルカドゥケ・フォン・ヴィスコンティと言う。忘れるでないぞ?」
「はい」
メモ帳を出し、カタカナで彼女の名乗った名を全て書き連ねる。デュークと言うのが公爵だと聞いたので、二つ目と三つ目で判断するなら”アルカドゥケ”と言う爵位なのだろうと判断はできる。残念ながら、その爵位が何であり、どれくらいの高位なのかを判断できる知識がないので何ともいえないが。
ただ、ひとつ気になるのは一番最後に「ヴィスコンティ」とついている事だ。ヴィスコンティと言うのは、今俺が存在している国の名称であり、ミラノやアリアの家が仕えている国である。冷静に思考をして、搾り出すように「あの……」と漏らす。
「うむ、なんじゃ?」
「もしかして、この国に関わる高位な方だったりしますか?」
「まあ、そうじゃな」
「それこそ、この国の成り立ちに関わるような――」
「うむ」
「それこそ、王家に連なる人だったり、しますか?」
「であるぞ」
ばっか! 俺のバカ! と言うか、これに関してどういう星のめぐり合わせや運勢の巡り会わせをしたんだ! 確かに地震が発生した直後、周囲の状況を確認するついでに人助けできる範囲で色々やったのは認める。それにミラノやアルバート、終いにはミナセのことだって助けに行ったが。それがどうしてこの国の王様関係の人に目をつけられなきゃいけないんですかね?
心臓が一気に早鐘を打つかのごとく脈打つ、そして嫌な汗――脂汗が背中や顔に張り付くようにして発露し始め、緊張のあまり拭っていくらか自身を落ち着けようとした。
「――その、姫」
「ヴィトリーで良い、クラインも様付けではあったが名で呼んでくれたぞ」
「では、ヴィトリー様。その、何ゆえこのような場所に? それと、自分はクライン様ではありません」
「うむ。実は我が父が先の事があったがため視察をしにくるというのでな。妾も気になってヒッソリとお忍びで来たのじゃ」
「……自重してください。ヴィトリー様に何かがあった場合、この国の未来も閉ざされてしまいます」
「ほんっとうにお主はクラインと同じ事を言うのじゃな。実は記憶を失い見掛けが変わっただけで、本人ではないのか?」
「そんな訳無いじゃないですか……」
丁寧に話せば話すほどミラノ達の兄に似ていると思われるらしい。それに、言うことの中でもいくつか実際に言ったことを俺がそっくりなぞる様にして言っているから、さらに似ていると言われてしまうのだ。
どうしたものかと困惑していると、店のほうから二人がやってきた。
「あら、ご主人様。一人になった途端に女性に声をかけるなんて。英雄色を好むとは、このことかしら?」
「いやいや、俺が声をかけられた方だから」
カティアは相変わらず俺に対して厳しい。背嚢が無くなって銃を首から前面へとぶら下げているだけとはいえ、そんな人物に荷物持ちを率先してやらせるあたり鬼畜さが滲み出ている。もし非常時になったらどうしろと言うんだ、まさか相手方に「ちょっと荷物を置くので待ってほしい」と願い出るのだろうか? 残念だけど、俺が逆の立場だったのなら「もらったぁ!」と射殺する。
そうやってカティアの相手をしている合間に、アリアはアリアでヴィトリーを認識すると数度口をパクパクさせた。そしてカティアに口撃を受けている俺の方へとやってきて、声を潜めた。
「ヤクモさん、失礼なことはしてませんよね?」
「い、いや。できる限り丁寧に対応してた。
やっぱり、偉い人?」
「偉いなんてものじゃありません。国王様の一人娘で、私達が本来関わって良いような相手では――」
「おい、お主等。なにをコソコソと内緒話をしておる。妾も混ぜぬか」
そう言われ、アリアは若干空を見上げてからコッソリと深いため息とともに諦めた様だ。俺に「失礼だけは無いようにお願いします」と言って向き直ることを決めた。
「――姫様、もしかしてまた抜け出したんですか?」
「いやいや、父が近いうちにこちらに来て視察をするのでな。妾が一足先に来て様子を見ておるのじゃ」
「つまり、国王様が居なくなった隙に魔法で抜け出したのですね」
アリアがそう言うと、ヴィトリーはけらけらと笑っていた。どうやら魔法で城を抜け出したようだ、が――
「ん、あれ? 王様が先に城を出て、後から魔法で城を抜け出して、先に街に到着したって事……?」
「はい、そうです」
「ん、ん? 移動してきた速度が速いのか、それとも位置的に短縮してきたのかな……」
「おぉ、お主は凄いな! そうじゃ、お城からまっすぐこちらまで飛んできたのじゃな。
馬に乗り、王都から駆けて来たとしても数日はかかる距離を妾なら瞬く間じゃ」
俺の推測や憶測での呟きがどうやら正解に近かったらしく、ヴィトリーが大喜びしていた。そしてそのタネを明かされ、テレポートやワープの類なんだろうなと結論付けていると周囲が幾らか騒がしくなってきたのに気がついた。周囲の人々がアリアとヴィトリーを見て何やら言い合っているようだ、もしかすると身ばれしたのだろうか?
騒々しくなるのも不利益を被るのも嫌なので、アリアにそっと進言した。
「――こんな往来の真ん中で会話をするよりも、どこか落ち着ける場所に行ったほうが良いんじゃないかな」
「あ。そ、そうですね。確かに……」
「妾は別に構わぬが、その方が良いというのならそれに従おう」
と言うわけで、俺たちはどこか落ち着ける場所は無いだろうかと考えた結果、とんぼ返りをするようにゲヴォルグさんの家に再び押しかけることとなった。当然公爵家との繋がりが深いゲヴォルグさんは、すぐさま俺の連れてきた訪問者が誰だか理解したようであったが。
「姫様、ご機嫌麗しく……」
「うむ、久しいなゲヴォルグ。数年ぶりか?」
「そうですな、もうそんなにしますか」
「――うむ。最後に会った時はクラインがおったな。あれ以来じゃ」
なんて、二人が挨拶と久しぶりの友好を温めている中でそれとなく情報を拾う。ゲヴォルグさんが最後にヴィトリーと会ったのが、どうやらミラノが誘拐される前らしい事が考えられる。それ以来会っていないと言う事や、数年と言う単語が出たことでそう遠くない過去にミラノが誘拐されたんだろうなと憶測を立てた。
「まったく、隠遁などせずとも妾の護衛でもしておれば良いと言うに」
「ワシも、そろそろ腰を落ち着ける時期かと思いましてな。
それに姫様はまだ初のお披露目すら済ませておらぬでしょう。顔が知られているならいざ知らず、まだ庶民もお顔を知らぬ人が多い故に大丈夫かと」
「しかしじゃな、城に居る間は乳母や召使い、大臣や父くらいしか話し相手がおらぬ!
もっと妾は、外の事を知りたいのじゃ!」
「はて、教育係が抜けておるようですが」
「あ奴は敵じゃ! 妾が少しでも城を抜け出そうとすると即座に魔法を封じてくる。
そして身動きできぬ妾に説教だの教育だの講釈だのを垂れおるのじゃ!」
「今年でお披露目もありましょうに、そうしたら幾らか自由になりましょう」
「じゃが、警護の者を付けねばならぬ。どうせ『姫は顔を知られておりますので、護衛無しで行動するのは避けていただきたい』と言われるに決まっておる!」
本当に姫様なのだろうか。あまりにもテンションが高すぎるというか、歯に衣を着せぬ勢いで色々と言っている。ゲヴォルグさんが相手をしている傍らで、俺はアリアに聞いてお茶の準備をしていた。カティアはコップなどを出してくれて、初めて協力プレイをしている気持ちになれた。
魔法で水を出す、魔法で火を出してお湯を作り出す。水を得る労力と火を作り出す労力を全て無視できるので、準備にかかる時間は短く素早く終える事ができる。買い物の最中アリアが持ち帰りたいと購入した茶葉を早速だが使う。さすがに甘味や口の寂しさを紛らわせるものは無いが、仕方の無い話だ。
準備を終えたので、カティアを従えるようにお茶を持って戻ると、どうやら楽しそうな会話は進んでいるようであった。俺が「無作法と淹れ方に関しては、ご容赦ください」と言って差し出した茶を、ヴィトリーは姫と言う身分でありながらも、何の疑問も抱かずに受け取り、息を吹きかけて幾らか冷ましながらちびりと口にした。
出しておいてなんだが、少しは危機感を持ったほうが良いんじゃないかと思ってしまう。そういう人なのか、あるいはクラインに似ているから許容しているのかも知れないが。もし俺が心無い人だったり、目先の利益を優先する輩だったらどうするつもりだったのだろう。薬を盛ったりするのが容易いだろう、それによって他国において自分を保護してもらったりする交渉材料として、手土産に姫様を連れて行く可能性だってあるというのに。
ゲヴォルグさんが咳払いをすると同時に、俺は口を開いていた。
「姫様」
「ヴィトリーで良い」
「失礼。ヴィトリー様。今日初めて会った人のお茶を、何の警戒も無しに飲むのは、ちょっと無用心ではないでしょうか」
「む?」
「もし自分が、他国の間者だったり、あるいは秘密裏に活動している人物だったらどうするつもりですか」
「お主まで言うのか、それを。昔、クラインにも言われたわ」
「しかし、姫様。こ奴の――ヤクモの言うことは正しいのでは。
確かに様々な事をしてきたのは否めませぬが、大仕事であれば長い目で見た潜入などをこなしましょう。英雄と噂される事も、”任務”として箔を付け容易くするためとも考えられます故」
「では、お主はヤクモを疑うのか?」
そう訊ねたヴィトリーに対して、ゲヴォルグさんは「いや、自分は疑いますまい」と言って、まだ熱いだろうお茶を一気に飲み干した。そして、どうやら炉に火を入れていたらしく、その様子を見るといって鍛冶場へと去っていってしまった。後には俺とアリア、カティアにヴィトリーだけが残される。
ゲヴォルグさんの言葉に納得がいかなかったのか、背もたれにもたれるようにズズズとヴィトリーは沈んだ。本当に姫様なのかと問いたくなる光景だった。
「むう、せっかく久々に会ったと言うに。誰も彼もが面倒なことばかり言いおって……」
「皆さん、それだけ姫様のことを大事に思ってくれているのですよ」
「お主は昔から優しいな、アリアは。――ところで、ミラノは居らぬのか?」
「姉さまは学園で帰省準備をしてます。長い休みですし、久しぶりに家族に会おうかと言う話になってまして」
「ならちょうど良いな。今度の視察、お主等の父が付き添いで来ることになっておる。話でもすれば良いじゃろう」
「父さまが――」
この前の襲撃の時、ものすごく短い間ではあったがミラノ達の父親は来ていた。しかし、モンスターの残党狩りや治安維持、被害状況の確認やら何やらで忙しそうにしていたがために、直接会うことは出来なかったそうだ。
表情を幾らか輝かせたアリアだったが、その視界の中に”見慣れた顔”があるのに気がついて、シュンと意気消沈した。
「なんじゃ、嬉しくないのか?」
「いえ、嬉しいのですが。その――ヤクモさんのこと、どう説明しようか迷いまして」
「あぁ、うむ。説明が難しいのじゃ……」
「あぁ、えっと。もの凄い今更なんですが、ヴィトリー様とミラノやアリアは――旧知の仲なのでしょうか?」
「あぁ、言って無かったか? 妾は御三家と言われる公爵達とは幼い頃から付き合いがある。その中でもミラノ達デルブルグ家とは一番関わりが深いのじゃ。
昔はよく一緒に遊んだのう。覚えておるか? 湖が見たいと我儘を言って、黙って抜け出した事は」
「はい。あの時、スライムとオーガに襲われて、死ぬ思いをしたと聞いてます」
「クラインが木の剣で立ち向かって、何とか撃退したのじゃ。
入れ替わりざまに救助が来て、妾は目いっぱい怒られるわ、ミラノも一月は屋敷から出ることを禁じられたのじゃったな」
「あの時の兄さまは、物凄く格好良かったと聞いてます。
普段は大人しくて、本を読み市井に赴くのが好きな。大人しい人でしたから。
父さまも兄さまに度胸があると喜んでました」
「うむ。生きた相手が初めてとは言っておったが、中々に見事であった。
しかし、残念じゃな。クラインが居れば、お付の人として指名したのじゃが」
アリアとヴィトリーが会話をしている中、俺とカティアはウィスパーで無音会話をしていた。とは言っても会話の頻度は多くなく、適度に適当にと言うものではあったが。
『――はぁ、比べられるのかなぁ』
『比べられるのは嫌なのかしら?』
『俺は嫌だ』
比べられるにしても、生きた他人であれば良い。けれども、クラインは故人なのだろうし、よって『綺麗な思い出』を追い抜かすことは永遠に出来ないのだ。なまじ外見や見た目等が似ているせいで、俺は頭を押さえつけられたままにこれから生きていかなければならない事が宿命付けられてしまった。
比べられると言うので思い出すのは、弟や妹とずっと比べられてきた事だ。勉学においては弟には勝てなかった、語学力やコミュニケーション能力では妹に勝てなかった。あえて言うのであれば、体力でしか弟と妹に勝てなかったのである。
しかし、父親は公務員で母親はかつて検事の卵だったと言うことから、体力に優れていたところで苦笑しかされず、やんちゃでいても許される年齢はあっという間に過ぎ去ってしまった。高校生の時は、一番劣等感と肩身の狭さを感じていた時期だ。あの頃色々やりはしたが、それに付随する周囲の記憶が殆ど無い。数名の親しかった友人の名前くらいは覚えているものの、全員就職とともに北海道や沖縄――中にはパプワ・ニューギニアに行った者まで居た。事実上の、高校生時代のクラスメイトとの縁を失うような学生生活を送っていたのである。
それでも、劣等感を抱いていたからこそ色々と挑戦するつもりになれたし、色々と習得し活用できるようにもなれた。だから、交友関係では壊滅的な打撃を受けたものの、その後の自衛隊生活で損をせずに済んだ事は多々あると思っている。
とはいえ、自衛隊でどんなに頑張っても――それを認めてくれるかもしれない相手は、先立ってしまったのだが。
俺が俯いてしまうと、カティアの声が聞こえなくなった。それからわずかに震える声で『御免なさい』と聞こえた。
『貴方の繊細な場所に、土足で踏み入るような真似をして』
『いや、いいよ。俺は怒れないし、許すことしか出来ないから』
両親から比べられ続けた結果、試行錯誤して言われたのは「優しすぎる」という言葉だった。どこを見てそう言ったのかは分からないし、今でも俺はその評価が納得いかない。俺は、俺のために色々しただけだ。その過程の中で――覚えていないかもしれないが――やった善行があったとしても、俺にとっては『優しい』なんてもので評価されても嬉しくなかった。
力なき正義が無力であり、正義無き力が暴力とは聞くだろうが。それに近いものを俺は感じていた。頭がよく様々な事を理解できるのであれば、それだけ多くの事が出来るだろう。様々な言語を操り、あるいはコミュニケーション能力の高さによって顔が広いのであれば様々なコネを使って様々な事が出来るだろう。しかし、優しいとか――優しすぎるなんて言葉は、あまりにも無力だった。発展が無く、手の届く範囲の事柄しか対処できないと言われているようなものだ。
実際に誰かを救えたのなら、それを実感できたのならそれも良いのかも知れない。『あぁ、優しすぎるって、こういうものなんだ』って理解できるのだから。しかし、頭の良さもコミュニケーション能力の差も嫌と言うほど見せ付けられるのに、優しすぎることで弟や妹が俺に対して何かしらの認めをしてくれるのだろうか?
たぶん、優しすぎると言う言葉そのものが『優しい嘘』だったのかもしれない。
『カティアも、この人の事をよく覚えておいて欲しい。目だけじゃなく、記憶だけじゃなく、出来れば匂いでも辿れる様に』
『それが役に立つと言うのなら、そうするわ』
『ありがとう』
カティアとの秘密対話も終了して現実に意識を戻すと、アリアとヴィトリーの会話はまだまだ続いていた。しかし、黙って聞いていると言うスタイルでやり過ごすのもどうやらここまでらしく、カティアットの会話を打ち切るのが遅ければ対応で戸惑っていただろう。
「よし、決めたのじゃ。お主、えっと――ヤクモ、と言ったか」
「あ、え? はい、何でしょう?」
「お主、クラインの代わりに妾の付き人となれ」
「ぶっ――」
咽る。というか、唐突過ぎて話の流れも理解してないが故にどう受け止めればよいのか分からない。アリアも驚いたようで「えぇ!?」と叫んでいた。珍しい光景がそこにあった。
「今話を聞いたところ、どこか別の所から来た名前も分からぬ風来坊と聞いた。
それに強いと聞くし、傍に侍らせておくのも面白そうじゃからな」
「しかし、ヴィトリー様」
「先ほどそちらの娘やアリアと話をしていたくらいに自然に話すが良い。
妾が許す」
「では失礼して。――えっと、その話は有難いんだけど。自分は現在ミラノのお付として配属されてますので。それに、恩義も幾らかある。その話を通すのなら、ミラノを通して欲しい」
「なぜじゃ? お主にとって悪い話ではないと言うのに。それに、別の形で恩義に報いれば良いではないか」
「率直に言いますと。城や宮仕えするには礼儀作法の知識も無ければ、王家がどれだけ偉大なのかを理解する歴史観も無いのです。わざわざ内部に、諍いのタネになりかねない人を、急いで取り込む必要も無いんじゃないかと」
事実、そうだ。考え方を変えれば”ミラノが所有する優秀な人材を姫に献上した”という、功績としての恩返しは出来るだろう。それでも、一時的なものでしかない。テーブルマナー、価値観や知識の不足、礼儀作法も知らない上に大臣や執政に関わる人物などの家がどのような歴史を歩んできたのかすら知らない。その上、”若造”として見くびられ、鼻つまみ者とされ、下手をすればヴィトリー自身の価値をも貶めることになる。巡り巡ってミラノ達に迷惑をかける可能性があると言うことだ。
打算的だとは分かっているものの、ミラノの下に居る限りはミラノやアリアなどにしか被害は行かない。けれどもヴィトリーの所へ行くとなると、どうしても家が絡んでしまうので事が大きくなってしまうだろうと考えた。
「もしミラノが許可したのであれば、あるいは自分が根無し草になったのなら――
それでも構わないと言うのであれば、その時にでも」
「うむむ……断られるような気はしてたが、実際に断られるとやはり心苦しいな」
「姫様、兄さまにも同じように言って、同じように断られてましたからね」
「むむむむ……」
クラインと重ねてるからか、どうにも諦めが悪そうに見える。そうやって悩んでいた彼女だったが、すぐに何か思いついたように手を叩いた。
「そうじゃ、良いことを思いついた! オルバではなく、こやつを付き人と推薦しておこう!
うむ、それは良い考えじゃ」
「あ~、えっと……はい?」
「オルバ様は現在の教育係をされている方です。年若くして学園を卒業した、優秀な方だと言われてます。今年で十七になられるとか」
「……単純計算で十一の時には学園に入ったって事かな」
「いえ、九の時に入ったとか」
学園に入ってくる魔法使いはあまり若すぎたり老いていたりはしない。規約として上限や下限は設けられてはいないものの、雰囲気と言うか何と言うか――ある一定の年齢になったら学園に入り魔法を習熟し、他国自国含めて交流を深め、将来国を支える人材になるようにと考えられているようには見受けられる。
それでも、多いのが十二歳くらいで学園に入って来て、十八歳に卒業して去っていくというのが多いとか。それを踏まえると十五歳で卒業してからの三年で宮仕えにまでなれたその人物は優秀なのだろうと考えてしまう。
そうやってアリアと会話し、色々と考えている間にもヴィトリーの中で話しは勝手に纏まっていっているらしい。それが良い、それが良いと一人呟くと席を立った。
「うむ、邪魔したな。それでは、今日は帰るぞ!」
「え!? 姫様、少し待――」
「さらばじゃ!」
そして無詠唱、魔力で魔方陣を構築して発動するという高等技術で、彼女の姿は一瞬で消えうせていた。後に残された俺たちは呆然とする事しか出来ず、若干現実逃避気味にお茶のお変わりをしたり空になった器を下げて洗ったりする。
アリアはヴィトリーが居なくなった事で小さくため息を吐き、新たに注がれたお茶が熱いことでびっくりしたりしていた。
「ヤクモさん、大変なことになりましたね……」
「このままじゃ、そのオルバと言う人も黙ってなさそうだね。
んで、国王と一緒にミラノ達の父親も来るから――。
うわぁ……」
もう、いっそ隠れてやり過ごしたほうが良いんじゃないかなと考えてしまう。俺の考えを表情から読み取ったのか、カティアはウンウンと頷いてるし、アリアは苦笑からため息のコンボを見せた。やはり想定外の面倒くささなのだろう。似ていることでうまくやれるかなと思ってはいたけど、どうやら俺にとって枷になるだろう
かといって、そのために数点残ってる特典を利用するのもあほらしいので対策を立てるのが一番だろうか……。それにしても、最終的に俺の意見やミラノのこととか関係無しに俺を傍に置くとか言い出したあたり、勝手だなと思う。
「――今日戻ったら、ミラノに言わないと。アリアも、何とかミラノが怒ったりしないように手伝ってくれるかな」
「私は構いませんけど。その……、姉さまも話せば分かってくれると思います」
「だといいけどね……」
早く帰ったほうが良いかも知れない。そう判断し、後片付けをしてからゲヴォルグさんに挨拶をして帰路へとついた。帰りながら、どうしたらまずミラノが怒らないように話を切り出せるか、その上でヴィトリーをうまくかわせる方法か――最悪、受け入れるにしてもどのように対応すれば良い結果に落ち着くか等を語り合う。そういった間カティアは人としての歴史が浅く、聞くことしか出来ない。それでも話を聞くことで、人との付き合いとはどういう風にしたら良いかを学んだり考えたりはしているのだろう。
俺個人が教えられることなんて断片で、幾つもの事柄や沢山の人と関わったり経験、成長していくことで教えた事柄が完成していくものだ。例えば、八九小銃の扱い方や狙って長距離でもぶち抜いてく手法を俺が教えたとしても、体格差や経験、感覚の違いでまったく当たらない事だってあるのだから。それを基準として自分とすり合わせ、削り、付けたし、変更していった先で似通った方法となって射撃に生きていくのと同じだ。
だが、カティアだけじゃなく俺も自分自身の価値観と今の世界における常識や価値観などとすり合わせている最中なので、偉そうな事は言えない。ただほんの少し人として長く生きて、ただほんの少し戦いに関して経験と知識があって、ただほんの少し色々考えられるだけでしかないのだから。
「なんか、人ごみが凄いですね――」
「たぶん、国王が来るという情報が街に広まったんじゃないかな。だから見栄えを良くしようとしたり、あるいは普段は開放してる道を一時的に封鎖して作業してたり」
「これじゃ帰るのが遅れそうね」
「いや、帰るのが遅れるのだけは避けたい」
ヴィトリーとの遭遇と時間の消費は意外だったが、それでもだいぶ時間が圧迫されているのは確かだ。これから日がどんどん沈み、明るさが失せて帳が下りてくる。そうなると――言っては何だが――治安が悪くなる。殺人事件があったばかりだし、そういうリスクを背負いたいとは思わない。
マップと睨めっこをしながら、自分たちの歩む速度と時間とを計算して、どれくらいに到着するだろうかを確認する。ギリギリになるのだけは避けたいと思い、幸いなことにこの前の襲撃のときに幾らか埋めたマップによって細道を通ればショートカットになるだろうと言う事が分かった。
当然、大通りじゃない分リスクを背負うことになるのだが、それは仕方が無い。
「アリア、カティア。細道を通って急ごう」
「そうですね。このままじゃ、姉さまに迷惑をかけてしまいます」
「夕食に遅れるのは嫌だもの」
一人だけ遅刻じゃなく食事の心配をしているあたりズレてるなと思わないでもないが、別に彼女が行動指針を打ち出して行動している訳じゃないので特に何も言わずに進路を切り替えた。人の気が一気に少なくなる。それでも細道から細道へとグニャグニャと進行していく速度はかなりスムーズだ。もし戦いであったなら愚考としか言えない道選びや行動だけれども、今回はただの帰路なので問題外だ。
「これなら大いに間に合いそうだ」
「良かったです……」
「さて、ミラノは怒ったりしてないかな。大丈夫かな……」
「どれだけ怒りっぽいんですか、ヤクモさんの中の姉さまは」
もう少しで抜けるかなと言うところで一人分の足音が減った。雑踏ではなく、建物で左右を阻まれている分音は響きやすい。なので、なぜ一人分の足音が減ったのかを確認するように見ると、カティアが横道を見て立ち止まっていた。しかも俺とアリアが立ち止まった事にも気づかず、その横道をじっと見ている。何かを見ているのだろうかとカティアの傍に寄り、道を見るも何か特別なものは見当たらない。
「カティア、どうかしたのか?」
「――血の匂いがする」
「血?」
「ええ。少なくない量だけど」
その時、俺は直ぐに危険を感じて無視していれば良かったと後々後悔する。あるいは、行って良かったのか……。カティアにアリアを守らせ、彼女の見た方向へと進んでいった俺は異様な光景を目にした。
曲がり角の先から頭部大くらいの何かが鼻先を掠めた。それに付随して何かが横顔を叩きつけるように飛んでくる。受けてからの回避行動、壁に張り付いてから曲がり角の奥から更に何も飛んでこないかを警戒した。
そして警戒しながら、自分の鼻先を掠めて壁に叩きつけられたものが何なのかを確認する。そしてそれが人の片腕だと理解するのに数秒かかった。人の腕だということが認識できても、それがなぜ飛んできたのか、なぜその先にあるはずの胴体やら人の姿やらが無いのか。そういう思考をしてるうちに、カチリとスイッチが入るのを感じた。
「ヤクモさん!」
「いったい何が――」
片手を真っ直ぐに突き出し、前に教えたハンドサインを二人に示す。声を出す事で察知される危険性を低くし、”闘争か逃走か”という戦闘の基礎で優位に立てるようにする為だ。戦うのであれば奇襲を、逃げるのであれば時間と距離を稼ぐための思考。
手の平を見せるようにし、それからその手を水平に横にし、少しばかり下げる。”トマレ”という意味と”シセイヒクク”の意味だ。俺は二人を見ていない、それでも二人の動きが止まり、気配が小さくなるのを感じる。そして俺は二人が離れた位置で止まったのを横目で確認すると、安全装置の確認とスライドを一度ばかり下げて”準・戦闘体制”へと移行する。
街中故の行動の変化、市街地戦を想定した行動で角から徐々に向こう側を確認する。そして片目で向こう側を見渡したとき、俺は信じられない光景を目にした。
――クロエが、人を引きちぎり、その血を啜っているところだった――
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