第4話

ぬるくなった残りのビールを流し込んで

空き缶を机に置いたままベッドへ倒れ込んだ

頭がぼーっとするのは酒のせいか疲労のせいか

酔えるわけではないのだが

毎日こうして缶を開けては泥のように眠る

重たくなる身体

夢に落ちていくのがわかる

あぁ なんか頭が痛いなぁ…

脚が動かない

早く、早く走りたいのに全然進まない

さらさらと砂になって崩れ落ちる

この崖から飛び降りよう





長い長い落下のあと

地面に堕ちる前にアラームが鳴った



指先でアラームを止める

薄暗いいつもの自分の部屋

……やっぱり頭痛い

身体が重い

ベッドから降りて……あれ?床が冷たくない

いつも以上に視界が悪い

洗面所で顔を洗う

手にかかる水は氷のように冷たい

でも顔に触れた水は冷たくなかった


いつもの服に着替えてテレビのスイッチを入れる

画面がぼやけて見えない

まあいいか

いつもの手順で身支度を済ませ、

いつもより大きくため息をついて玄関を出た

イヤフォンを耳にあてて、プレイリストからいつもの曲を選んで

駅までの道を歩く

街並みはいつもと同じ

白っぽくぼやけて息を潜めているようだ

今日は音が聞こえにくいな

改札をくぐり、ホームのいつもの場所で電車を待つ列に加わる

なんだか息苦しい

滲む視界の先に電車は到着し、乗客の波に押されて車内へ乗り込む

三両目の一番前の車両のドアの前の手摺りに掴まった

立っているのがやっとだった

流れる車窓の景色が歪む

目の中が熱い

……そうか 熱があるのか

風邪でもひいた?

足に力が入らない

手を離したらダメだ

掴まってる手摺りがぐにゃりと歪んだ

……ダメだ 倒れる

諦めた瞬間


「次で降りましょう」

耳元で声がした

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