レイン、再敗
「はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」はぁっ……」…
閃光や衝撃と共に生じた凄まじい痛みによって魔王との戦いが続行不能となってから数分後、レインたちは息を切らしながらも立ち上がり、ビキニ衣装に包まれた大きな胸を揺らせる状態にまで回復した。彼女たちとの実戦訓練の続行が不可能と判断した魔王が、漆黒のオーラの力を用いて数兆人の彼女たちから一斉に強烈な『痛み』を取り除いたのである。
ただ、魔王との凄まじい激闘の時間で生じた疲れは取り除かれる事無く身体に蓄積されており、レインたち自身にもこのまま戦闘を再開する意志は無かった。
「……ふん、これで己の身の程を知ったか」
そんな彼女たちが考えていたのは、魔王の言葉通りの内容であった。今の自分たちの実力なら、魔王に少しでも抗え、僅かでも傷を負わせる事が出来るかもしれない、と思っていた自分たちの甘さを、嫌でも痛感させられたからである。
彼女たちにとっては非常に長い時間のように感じた今回の鍛錬も、振り返ってみれば普段彼女たちが行う鍛錬の数分の一ほどの時間でしかなかった。たったそれだけの間に、レインたちは数兆人に増えて立ち向かわざるを得ないほどに魔王に圧され続け、そして最後は魔王が放った強烈な『魔術』の力で敗北を味わう事となったのである。
この実力で傷をつけるなど愚かにも程がある、と責めるように言葉を投げかけた魔王だが、レインが返したのは――。
「……そうよね……♪」うん……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」ふふふ……♪」…
――疲れたような表情の中でも見せる笑顔であった。
彼女の様子に驚いたかのように言葉を止めた魔王に、レインは言った。今回の鍛錬の目的は、勝つことや負けること以上に、自分がどれほど『身の程』知らずかをこの身で確かめる事にある、と。数の暴力で押し寄せてもあっという間に敗北してしまったと言う今回の結果が悔しいのも確かに事実であるが、それと同時に魔王の力を改めて思い知らされた事に対して、彼女は大きな意義を感じていたのである。
「昔も一度魔王に負けたけど……」「あの時とはまた違うよね」「うん、今回は勝敗が目的じゃないし……♪」
レインたちの心には、目の前に聳え立つ巨大な『壁』に挑む意欲が今までよりも多く湧き始めていた。今後どれだけ鍛錬を積めば越えられるかは分からないし、それ以前に超える手段が一切無いという現実に直面するかもしれない。それでも、彼女たちはもっと自分たちを鍛え上げ、次は今よりもほんの1秒だけでも、魔王に対して抗いたい、と言う前向きな考えを抱いたのである。
次第に元気を取り戻し、賑やかで明るい声をぶつける数兆人のレインたちに、魔王は冷たい口調を崩さずに言った。
「……貴様らの鼻が何度伸びても、全てへし折られる運命にある。覚えておけ」
「分かったわ、魔王」でも、何度だって伸ばしてみせる」またいつか、ね」うん、また……ね♪」
再び世界を真の平和に導く意欲を固めたレインに、魔王は鼻で返事をした。
その中に含まれている心が呆れなのか満足なのか、灰色の無表情の仮面の中をレインが覗く事は、まだまだ難しそうであった。だが、いつか覗いてみせる、と言う強い意志も、レインはたっぷりと宿していた。
~~~~~~~~~~
「「「「本当に魔王は凄かったねー……」」」」
「「「「「「やっぱり魔王の力は絶大よね……」」」」」」
長いようで短い貴重な鍛錬の時間が終わり、数兆人に増えたレインたちが一斉に穴から飛び出して帰還した後、レイン・シュドーは今回の結果を自分たちで語り合っていた。戦いの中で無我夢中で増殖し続けたせいで、『町』を模した本拠地の中は屋根も道も空中も、普段より多めのビキニ衣装の彼女で埋め尽くされていた。
あまりに自分が増えすぎて場所が狭くなった時には空間を歪めて拡張する事が必要になるが、それは明日に持ち越すことにして、今日はレイン同士でたっぷり鍛錬で得た『成果』を喋りとおす事に決めていた。
「「あの壁、全然破れなかったわね……」」
「「二重どころか無限にあったような気がする……」」
「「もしかしてあの『壁』、元から無限に重ねてあったんじゃないかな?」」
「「あー、それなら納得」」
「「やっぱり魔王は凄いわね……」」
今日の自分たちの反省点を話し合いつつ、レインは口々に想像を遥かに超えていた魔王の凄まじさを褒め称えていた。たった1人、孤独な最終決戦を強いられた『勇者』時代の彼女では考えられないような話の内容である。だが、今の彼女たちにとって魔王は越えるべき壁であると同時に、自分たちに様々な事を教えてくれる大事なパートナーでもあった。いつも無表情で冷たい口調だが、手札を増やすと言う名目で次々にレイン・シュドーを増やし、孤独だった彼女を癒し続けてくれていた存在こそが、魔王なのである。
「「ほら、あの最後の『魔術』」」
「「あれは本当に強烈だったね……」」
「「「でもすぐ痛み取れたじゃない?魔王はきっとあの力も使い慣れてるんだよ」」」
そして今回の戦いの中で、レインは少しだが魔王に心酔しようとしていた。元から様々な形でお世話になり続けていた存在があれだけ強烈な力を見せ付けられては、そういう意志を抱いてしまうのも当然かもしれない。それに、今のレインにとって、自分自身以外に完全ではないが信頼が置ける唯一の相手こそが魔王だったという事情もある。だからこそ、戦いで完全なる敗北を喫したはずのレインが、爽やかな笑顔を見せ、本拠地のあちこちでビキニ衣装に包まれた胸や尻を見せ付けあい、互いの健闘を称えあいながら魔王を褒め称える事が出来たのかもしれない。
「「そうだ、せっかく頑張ったんだから、レインたちでパーティー開かない?」」
「「「いいわね、たまにはこういったことも必要でしょ♪」」」
「「「「魔王は……呼ばなくていいか。馴れ馴れしくするな、って言いそうだし♪」」」」
「「「「「ねー♪」」」」」
もしここで、レイン・シュドーがほんの少しでもあの戦いの魔王の魔術を、『信頼』と言う鎧を取り除いた状態で見れば、ある事実に気づけただろう。
だが、次々と押し寄せる純白のビキニ衣装の彼女たちは、まだ誰も気づいていなかった――。
「うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」…
――実戦訓練の最後に魔王が放ち、たった1撃でレインたちを戦闘不能に追い込んだあの閃光の正体が、魔王を含めた魔物たちにとっては自らの存在を消されかねない、魔王自身も天敵に等しいと断言したはずの、『浄化』の魔術であった事を……。
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