Ep:6「うふふ♪……あれ?普通に意識してなく女性らしい笑い方になってた気が…」
僕は台所にて今日の出来事に溜め息を付きながら今日の夕食を作っていた。
今日はホワイトシチュ―に御飯、付け合せにサラダを作っている。
いつもならもう少し凝った物を作るのだけど、流石に今日は色々な出来事の果てに疲れた為、簡単に済ませようと思った。
「…うん、あと10分ほど煮込めば完成かな……」
シチューの鍋を軽く混ぜつつ、僕は愛紗さんと優との対面後を思い返していた。
*
僕は、僕自身の勘違いによって事故に遇い、愛紗さんの天使としての“奇跡”と呼ばれる御技によって助かった。助かったのはいいのだけど……まさか男から女の子に性転換して変わる事になるとは夢にも思っていなかった。
その後、僕は愛紗さんを伴い僕達の家に帰ると、妹である優に説明した。
その説明の後、今まで通っていた学園から優が通っている(殆ど不登校だが)女学院に編入する事になったり、優から本当に女性化したのか確認すると銘打ったセクハラや兄妹としてでなく異性として好意、秘めた想いを知ったりしたりと驚きの連続だった。
今後について話し終えた直後だった。
『愛紗ァ!そんな所にいつまで居座ってるのぉ!さっさと
と、何もない頭上から1人のどこか怒っているような女性の声が突然聞こえてきた。
「あ、あれ?……もう知ってるの、今回の事?」
愛紗さんは頭上に視線を向け、その聞こえて来た声に慌て気味に困ったように声の主に語り掛ける。
「……愛紗さん、どうしたのでしょうか?何もない天井に向かって会話をして?」
「えっ?優はこの声、聞こえてないの?」
「?…はい。私には姉さんと愛紗さんの声しか聞こえませんが?……もしかして、誰かいるのですか?」
「うん。姿はないけど、僕には女の人の声が聞こえてるよ」
どうやら優にはこの女性の声が聞こえないようだ。
……どうして僕は聞こえているのだろうか?
『いいからさっさと帰ってきなさい!いっぱい説教をしないといけないのだから!』
「…えぇ~嫌よぉ~」
『……いいから、も・ど・り・な・さいっ!!』
愛紗さんは声の人に頭が上がらないのか怖いと言う感情を乗せていた。
そして強く言われた愛紗さんは観念したように嫌そうに戻る事を了承した。
「うう、わかったよぉ~戻りますよぉ……」
『早くしなさいね、まったく……』
どうやら話が付いたようで、先程から聞こえていた女の人の声は聞こえなくなった。
そして、愛紗さんは物凄く嫌そうに溜息をついた後、僕達の方に向くと、
「はぁ~物凄く嫌ですが、一度天界に戻ります。うう、説教は嫌ですぅ」
「あはは…」
「帰られるのですか?」
「はい。先程、私の上にいる者から戻って来るようにと話が来てしまいましたので。まあ、多分直ぐに戻って来ると思いますが……七緒、優、じゃ、またね」
そう告げた後、愛紗さんの背にあの事故の後に見た白銀の翼を展開すると、「じゃあねぇ~」と手を振りながら愛紗さんの姿が消えた。
恐らく自分の故郷である【天界】に戻ったのだろう。
その瞬間、さすがの優も驚いた表情をしていた。
もしかしたら納得した風だったが、半信半疑だったのかもしれないね。
愛紗さんが帰ったその後、僕は優から今後について色々レクチャーを受けた。
これからの僕は女の子なのだからと教えられた。
まあ、女装させられていた時から、し、下着の付け方からメイクの仕方等、色々させられていたから今更ではあるが。
そしてレクチャーを受けた後、優は僕の編入手続きを始めた。
学院に連絡し、どうやら僕は明日、フォルトゥーナ学園に赴き編入試験を受ける事になった。
優によれば、フォルトゥーナ学園の偏差値は、僕が通っていた清王学園よりは下との事で僕の学力でも問題はないと言われた。
「…だいたいこんな所でしょうか……私も色々ありますので、姉さんは夕食の準備を御願いしますね」
「うん。分かったよ……それにしても、優、順応するの早いよね」
「ん?」
僕が女になって直ぐに『兄さん』から『姉さん』と呼んでいるのだから。当人である僕は慌てふためいたと言うのに。
「そうですね…『真実は何時も1つ!』と頭脳が大人の少年が言っている通りです。私も確認しましたしね。なら真実に准じるのは道理なのですよ、姉さん」
「…そういうものなの……まあ、優は少しおかしいからそれが普通のなのかもね」
「失礼ですね、姉さん……まあ、自分でも理解していますからいいですが」
そう苦笑しながら言った後、優は自分の部屋に向かった。
僕はキッチンに赴き夕食作りを始めた。
鍋を取り出す時とか、微妙にいつもより重いなと感じたけど、身長に変化はないので問題なかった。
やっぱり女の子化した事で腕力が落ちたのかもしれない。
*
そして冒頭に戻る。
あと10分程煮つめれば完成だ。
弱火にした後、僕は優を呼び一緒に夕食を食べる。
基本的にこの家での家事分担は僕が受け持っている。
優に任せると手間が増えるのが大きな理由だけど。
優には家事の才能はなかった。
その代り天才と呼ばれる程の頭脳を有しているのだから、問題はない。
優に出来ない事は僕が、僕が出来ない事は優がする。
それが僕達兄妹――姉妹…の在り方なのでした。
「…今日も美味しく頂かせて頂きました。いつもありがとうです、姉さん」
「うん。お粗末様。ふふ♪」
褒められるとやっぱり嬉しいものだね♪。
……あれ?…今、普通に意識してなく女性らしい笑い方になってた気がする、僕…
…まあ、考えても仕方ないかな…ふふっ…
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