反逆の魔皇

凪慧鋭眼

序章 『プロローグ』

 白き者は嗤う。


 ―――かつての仲間は骸を晒し、畜生以下の存在へと堕とされる。それでも足掻き、足掻き、足掻き、その者の勇姿を肴に白き者は嗤い続ける。


 黒き者は慈しむ。


 ―――何者にも屈せず、決して下を向かず、立ち止まらず。勇猛果敢に運命へと立ち向かい、しかしそれでも手は届かず、踊らされ、遂には絶望する者を慈しむ。

 その雄姿を愛し、その勇気を尊ぶ。


 彼の者の旅路は終わらない。終われないのだ。

 何よりも―――彼がそれを望まないのだから。

 故に、黒き者は恩恵を与える。一度だけの、命の灯火を。


 悉くを怨み、憎み、底のない怨嗟を宿す、その瞳。


 それは黒く、暗く、昏い。


 完全な絶望を経験し、尚も道を投げ出さず。


 彼の者の眼が何を映し、その手が何を掴むのか。


 ―――それは、神でさえも知り得ない。


 これはそんな男の物語。運命に翻弄され、その運命に立ち向かうという何処にでもあるような―――そして未だ何処にも存在しない、物語。

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