第29話 沖縄に行って帰れなくなって何が悪い!



「ねえ。なんでこうなってんの?」


 俺たちは今、沖縄にいて帰れなくなっていた。




「すっしーと田中の卒業旅行しようぜ!」


 たーちゃんが、いきなりそんなことを言い出したのは一昨日のことだった。いつも通り俺と瑠とたーちゃんでたまっていると急に言い出したのだ。


「いいけど、金は? あとどこに行くんだよ」

「ボクもお金次第だね」

「場所は沖縄。金は我にまかせろ!」

「おお! いいね! しかもたーちゃんもち!」

「だっぷん、そんな金あるの?」


 確かに瑠の言う通りだ。


「ふっふっふ。臨時収入が結構入ったから大丈夫なのだ」

「ほー! じゃあ、いつ行く?」

「明日だな」

「「早っ!」」


 それで、本当にその日に沖縄行きの飛行機のチケットを取ってきて、次の日に沖縄に旅だったのだが……


「結局金足りなくて、金無くなってんじゃねーか!」

「しょーがないじゃん! 我だってこんなにかかるとは思ってなかったし!」

「それにしてもだよ! どうやって帰るの! ボク、彼女とデートの約束もしてるんだけど!」

「瑠はおいて行ってもいいな」

「すっしーの意見に賛成」

「ひどいよ!?」


 そんな感じで、たーちゃんの見積もりが甘く、俺らは帰りの飛行機代が無く帰れなくなっていた。


「まずい。なんで、着た瞬間に風俗なんて行ってしまったんだろう……」

「それは、俺も思った」

「ボクは行ってないから関係ないね」


 クッソ。瑠はいいよな。毎日彼女とセッ○スしてるからさ。俺らはできないんだからな。


「もう開き直って、もう1回風俗行ってヌイてこねえ?」

「あり」

「ありじゃないよ!」


 まあ、冗談はこれぐらいにしてどうにかしないとな。


「どうやって金作る?」

「女捕まえて、我の1万ち○ぽをしゃぶらないかと聞く」

「ぶっ殺すよ?」


 ったく、たーちゃんは頭が相変わらず弱い。てか、俺と瑠の卒業旅行なのに、なんでこんなことにならなきゃいけないんだか。


「あー、ダメだー。我には思いつかない。あっ! そうだ!」

「なんかいい案思いついたの? だっぷん」

「いや、思いつかないから、気分転換に、女レ○プしてくる」

「帰る前に捕まるだろうが!」


 ダメだ。たーちゃん、帰れないせいで、頭がさらにおかしくなってやがる。


「俺と瑠で考えるしかない。たーちゃんは使い物にならんわ」

「そうだね。どうしようか」


 アニメのキャラとかで遭難とかしたときどうやって金作ってたっけ? 考えろ。考えろ! 俺!


「あ」

「なんか思いついたの? 高明」

「瑠って歌うまかったよな?」

「まあ、そこそこは」

「なら、路上ライブで金稼ごうぜ」


 よくドラマやアニメで見たことある。路上ライブをして、お金を稼いでいる人を。俺らもそれをやればいいんじゃないかと。


「えー、ボク恥ずかしいよ」

「瑠ちゃんhshs////」


 なにこれ。なにこのかわいい生き物。襲っていい? 舐めていい? 犯していい?


「高明、キモい」

「瑠ちゃんかわいい////」

「最近、ボクの暴言に反応しなくなったね……」


 まあ、慣れってもんですよ。


「とりあえず、金は瑠の歌で稼ぐってことで」

「ホントにその手で行くの!?」

「我もそれでいいと思うぞ」

「満場一致だな」


 まあ、本当の目的は瑠が歌ってる姿を写真に収めることだけどな。グフフ。


「まあ、ボクが歌うのはいいとして高明たちはなにするの?」

「俺は、写真係。で、たーちゃんは……」

「我は?」

「段ボールに‘‘帰れなくなりました。お金を分けてください,,って書いて土下座してる係」

「いいね。それ」

「ちょ! 我だけなんでそんなに扱い雑なの!?」


 いや、だって誰のせいで帰れなくなったと思ってるんだよ。


「誰のせいで帰れなくなったと思ってるの?」

「我です……」


 瑠もまったく同じこと思ってたか。


「じゃあ、分担はこれでいいな?」

「「ああ(うん)」」


 そうして、俺たちの沖縄ホームレス生活が始まった。




「重大問題が発生した」

「急になんだ。すっしー」

「なんかあったの?」


 俺たちは早速、路上ライブをしようとしたところ俺たちは重要な問題に直面していた。


「曲がない」

「「あっ」」

「この中にギターとか弾けるやついる?」


 俺がそう聞くと瑠もたーちゃんも、首を横に振った。これ、積んでね?


「どうする? 曲がないからアカペラで歌うか?」

「さすがにそれはキツイよ」


 ですよねー。ヤバいな。帰れん。


「なら、我にいい案がある」

「期待してないけど、聞いてやろう」

「なんで!?」


 だって、いつも碌なこと言わないじゃん。


「ふっふっふ。そんなことを言っていられるのも今のうちだぞ。すっしー」


 な、なんだ。このキモい笑みは!


「路上でめいぼうを……」

「「却下」」


 こいつ、マジで脳外科とか行った方がいいレベルで頭弱いぞ。すっしー、たーちゃんの将来が心配!


「なんで! なんで却下なんだ!」

「お前はそれで金稼げると思うのかよ。無理だろ? 捕まることしか……」

「うん? どうした? すっしー」

「いいこと思いついた」


 これは来たかもしれない。天才かよ。俺は。


「何を思いついたの? 高明」

「たーちゃんの案を採用する」

「おお! すっしー! 下ネタを言いたくなったんだな!」

「高明!? ついにおかしくなっちゃったの!?」


 まあ、瑠が焦るのもわかる。たーちゃんの案はまともじゃない。だが、俺らは元よりまともではないのだ。だったら帰る手段もまともじゃなくてもいい。


「まあ、俺の案を聞け」

「わかった……」

「さあ! すっしー! 一緒にめいぼうしに行こう!」


 たーちゃんはホントに人の話聞かないよな。




「じゃあ、作戦を説明する。まず、路上で下ネタを叫ぶ」

「やっぱ、おかしくなったんじゃないの?」

「最後まで聞けよ。瑠」

「うん……」


 瑠の落ちこむ顔……たまらんぜよ! じゃなかった。


「路上で下ネタを叫べばポリが来るだろ? そのポリに助けてもらうのさ」

「ああ! ボクたちはここの人じゃなくて、旅行に来たら帰れなくなったってことを伝えればいいんだね!」

「そーゆーこと」

「すっしー……お前天才だな」


 我ながら自分の知能の高さが怖くなる。


「まあ、結局は捕まるから別に褒められることじゃないけどな」

「まあ、確かに」

「じゃあ、早速セッ○スしに行こうぜ!」


 こいつ、話聞いてなかったのかよ。




 人通りが多い大通り的なところに来た俺たちは、早速、下ネタを叫ぶことにした。


「ち○ぽー! ま○こー!」

「陰茎! クリ○リス!」


 やっぱ、瑠って結構エグイやつ言うな。んで、たーちゃんは相変わらずのバカ。


「潮○き! 口内○精! イマ○チオ!」

「高明、やるね!」

「瑠もな!」


 この下ネタバトル! 負けられねえ!


「鈴口! だるま崩し!」

「駅弁! 対面在位!」


 瑠のやつ! やりやがるな!


「ちょっと君たちいいかな?」


 ポリスメン! キターーーー!!


「はい! なんでしょう!」

「路上で下品なこと言ってる人がいるって通報貰ったんだよね。ちょっと署まで来てもらえる?」

「「「はい! 是非に!!」」」

「なんでこんなに元気いいの?」


 俺たちは、それからポリに事情をすべて説明した。


「というわけなんです!」

「そうか。じゃあ、普通に働くしかないね」

「「「え?」」」


 な、なんだと? 俺が働くだと?


「そ、そんな!」

「だってお金無いんでしょ? なら働かなきゃ」

「「「おっしゃる通りです」」」


 ポリに言っても地元に帰してもらえず、俺たちは2週間とちょっと沖縄で働いて、無事帰ることが出来た。もう絶対沖縄なんて行ってやるか。←自業自得



※良い子のみなさんはちゃんと予定を立ててから旅行に行きましょう

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