第3章 辺境化冒険120分コース
プロローグ
「『タイムサーバ』の誤接続?サトミの時みたいな?」
「いや、あれはコース自体の選択ミス。今回のは、仮想世界サーバへの時刻管理システムの接続ミス」
「この学園コースに接続されているタイムサーバが、冒険コースにも接続されてしまった、ということですか?」
「そういうことかな。本来、『1分=1時間』のタイムサーバが接続されるはずが、『1分=6日』のタイムサーバが接続され、09:00から稼働してしまった」
「ログイン済の1,000人のユーザと共に、か…」
冒険コースは、旧来のMMORPGシステムとの併用で運用されている。フルダイブ時間帯では演算システムやデータベースサーバが膨大に投入され、ゲームの世界を肌で体感できるが、それだけに、利用料が高い。高校生が平日5日間みっちりバイトした分を週末のコース1回分に注ぎ込む、という感じか。
「旧来のゲームシステムと連動しているのが曲者よね。お金がある人は、仮想世界サービスの時間帯にじゃんじゃんレベルアップできるってことだから。まさしく、精神と時n」
「マリナ、その辺でやめとけ。まあ、お金があっても抽選に漏れることがあるからな。俺、一度もログインできたことがないよ」
「あたしはお試しコースでちょっとだけ試したけど、ホント面白かったわよ。屋台とか」
「お前はホントに花より団子だな。あ、お花見やってないや」
「お花見は後でやるとして、どうするユキヤ、46名の様子を見に行くのか?」
「そうだなあ…」
当然、開始直後にイベント処理がオーバーフローして破綻、仮想世界で何日も経てば異常が露呈し、ユーザは次々とログアウトする。それを見た現実世界側の運営はようやく問題に気づく。
しかし、10分以上、すなわち、仮想世界で2か月以上経過した今も、46名のユーザがログアウトしない。ログアウトは仮想世界側の処理なので現実世界側から強制ログアウトできず、また、冒険コースは途中参加が想定されていないので、スタッフが様子を見にログインすることもできない。
「放っておいても、120分経過で終了ログアウト処理が行われるのだけれども、そうすると…」
「2年か。長過ぎる」
「レベルアップとかを理由に、本人達が望んで滞在しているならいいんだけど、その46名に運営のゲームマスターまで含まれているのがなあ。何かあったのか…」
「メッセージにも反応がないんですよね?仮想世界側ならすぐ返信できるのに…」
同じタイムサーバを使用している仮想世界同士なら同期がとれるということで、またもや俺に依頼があったというわけだ。主な対応はGMの探索。承諾してくれるなら、『3月10日17:00』にグラウンドのトラック内で待機してほしい、と。
「まあ、行ってみるさ。危険なことはなさそうだし」
「異世界転移ね!あたし行きたい!」
「私達もついていくことができるんですか?」
「トラック内にいればいいんじゃないかな。行きたくないユーザへの注意は必要だが」
「お姉様が行くならあたしも行きます!」
こうして、俺達5人は期せずして、『冒険120分コース』に参加することとなった。ただし、リソースが極めて制限され、辺境化した剣と魔法の世界に―――。
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