冒険者・傭兵・自由騎士

◆エウロペロ・オヴェル空域世界は魔物・神代時代の遺跡を始めとした、非常に厄介な存在や神秘の謎に満ちた事物が数多く存在している。それらが起こすトラブル、または謎の解明の為に、世界各国では「冒険者」(ペリークリトリア/Periclitria)と呼ばれる人々が活躍している。


◆冒険者は基本的に登録免許制で、国際機関である「冒険者国際連盟」(ペリークリトリア・マグナフォエデラティ/Periclitria magnafoederati)、または冒険者の登録免許制度を設けている国の免許試験に合格する必要がある。空域では「今日から俺は冒険者になる!」では冒険者にはなれない仕組みになっている。その事を知らずに冒険者の活動をして、逮捕・指名手配されたり、司直によって起訴される異世界人(地球人)の数は多い。


◆国際的な『冒険者等級』が存在し、上位になればなる程、経験豊富で、かつ凄腕の冒険者である。一等級~一三等級までランククラスがあり、一等級ランク冒険者ともなると、単独で強大な力を誇る魔物、あるいは神々を相手に互角以上に戦える実力を持っている。その為、死後に神として昇天を果たしたり、星座としてまつられる者も少なくない。


◆冒険者達は、その多くが各国にあるその国の「冒険者組合」(カスス・コレギウム/Casus collegium)に所属し、各国の街にある「冒険者酒場」(カスス・タベルナ/Casus taberna)で依頼(クエスト or ぺティティオ/Quest or Petitio)を受注したり、同盟団(パーティー or アミ―クス/Party or Amicus)を結成したりする。


◆また戦争時には傭兵として働く冒険者も数多く、そこでの働きを認められて貴顕の地位に上り詰める者も少なくない。


◆七等級までは冒険者酒場で受領したり、公的機関から要請されたクエスト達成によって得られたポイントの加算合計で昇級する仕組みになっている。しかし六等級から国際昇級試験に合格する必要があり、更に一等級の冒険者になるには冒険者の守護神である、冒険神ペリークリトルアモルの使者から課せられるクエスト、通称『勇者の難業』を達成しなければならない。


ただし強力な力を持つ宝具/神器の封印を解除したり、その主になったり、「冒険者国際連盟」により緊急指名手配された狂暴な魔物を討伐したりすると、その功績を評価されて二等級ランクまで昇進を果たす事は可能である。または天上の神々からの依頼によるクエストを果たし、強大な加護を授けられた場合も、同じく二等級ランクまで昇進を果たす事が出来る。


◆『勇者の難業』の内容は非常に過酷かつ、数年ないし十数年間の長きに渡る場合もある。その為、クエスト達成確率は約一五億分の一程しかなく、一等級ランク冒険者は非常に数が少なく貴重な存在である。


◆また『勇者の難行』には、いわゆる「チート能力」や「前世の時に得た技能」や「神々によって授けらた強大な加護」等が無効となる試練が数多く、異世界転生人や召喚者の多くも、そう簡単に取得出来ない構造になっている。


◆一等級ランク冒険者の戦闘力はSSRクラスやHRクラスの〈大いなる騎士〉に匹敵、または遥かに凌駕する。その為、一等級ランク冒険者を優遇する政策を執っている国は数多い。国によっては自由殺人許可証が交付されていたり、莫大な金額の年金が支給されていたり、国家元首に次ぐレベルの行政権が与えられている場合も珍しくない。


◆遺跡発掘を中心に行なう冒険者もおり、彼ら彼女らは〈発掘者〉(テーサウルス・ウェーナートル/Thesaaurus venator)と呼ばれる。国際機関である「世界発掘者連盟」(テーサウルス・フォエデラティ/Thesaaurus foederati)から認定許可証を授与された身分である。未知の遺跡を発掘・探検する事は勿論の事、それらを学術的に研究・分析したり、不法な盗掘者を撃退・捕縛する仕事を行なっている。


◆傭兵は主に戦争参加・魔物討伐・警備の仕事を主として行なう者である。傭兵には免許がなくても、傭兵団・戦士団に所属すればなる事が出来る(当然、その傭兵団・戦士団の課すテストに合格しないといけないが)。その為、傭兵として経験を積んで、冒険者試験に挑む者も少なくない。その為、冒険者志願者の育成事業を柱にしている傭兵団・戦士団も存在する。


◆冒険者として最も割合が多いのは一三~七等級ランクで、全体の八割にのぼる。

その中で特に割合が多いのが一一~八等級ランクで、割合の内およそ六割になる。

その理由として昇級試験によるふるい落としの他にも、七等級ランクになると普通の生命体として到達できる最大レベルである一〇〇に達するからというのも大きい。そのレベルまで達する事がかなり困難だからである。

概ねの冒険者は九~八等級ランク、レベルに換算すると六〇台、よくてもレベル七〇~八〇台で終わってしまう事が普通である。


六等級となるとレベルキャップが外れ、それから三等級ランクになるまでレベルが数千万~数億ずつ上昇する格好となり、二等級ランク以上になるとレベルがより一挙に跳ね上がり、京どころか垓や杼を優に超えるレベルにまで至る事が普通である。


◆〈自由騎士〉とは、臨時/短期仕官、または正規仕官をしていない〈血統騎士〉の事である。彼ら彼女らの出自は代々続く伝統ある騎士貴族の家柄でなく、庶民の出自が非常に多い。〈自由騎士〉は各国政府が設ける「自由騎士団」または「従/副/準騎士団」に所属・身分登録している事が多い。扱いとして「二軍、三軍の選手」の様な物である。中には武技を鍛える為に、あえて〈自由騎士〉になっている貴族・名家出身の騎士もいる(ちなみに不品行が祟って、懲罰的に自由騎士の身分に落とされた貴族・名家出身の騎士もいる)。


◆それら〈自由騎士〉は各国政府から俸禄を支給されている事が多いが、前述の通りあくまでも「二軍、三軍の選手」扱いなので、その額は騎士団所属の〈正騎士〉に比べると遥かに低い(国によっては俸禄を支給しない所もある)。しかし、種々の拘束・法的規制が騎士団所属の〈血統騎士〉と違って緩かったり、国によってはない上に、自由騎士試験に合格したり、自由騎士団への所属登録を行なった時点で、彼ら彼女らに冒険者免許を授ける国がとても多い。その為、〈自由騎士〉は日頃から冒険者として働いている者が数多い。


◆中には際立った活躍・冒険をして、勇名を馳せた〈自由騎士〉もおり、その様な騎士達の逸話は、英雄物語になって後世に伝えられている事が多い。


◆〈自由騎士〉にも経験・討伐に応じて、国際自由騎士同盟が認定する国際等級が授与される。


◆等級は一~一〇等級あり、冒険者とは逆に、数が多い程、等級としては上になる。


◆〈自由騎士〉等級名は〈星〉(ステラ/Stella)という呼称である。最下級は〈一つの星〉(ステラ・ウーヌス/Stella unus)、最上級は〈一〇の星〉(ステラ・デケム/Stella decem)である。


◆冒険者等級とは違い、昇級試験は存在しない。ただ、昇級評価は高額指名手配魔物/魔神の討伐、重犯罪者の捕縛/誅滅、多くの人々の平和を守る為に、暴虐悪政を振るう為政者と戦ったかどうかを中心に評価される為、魔物/魔神討伐、重犯罪者の捕縛/誅滅を積極的に行わず、悪しき為政者と戦うという『正義の行い』をしない〈自由騎士〉は、昇級が難しい構造になっている。また各地で開かれる公式武闘大会で上位入賞する事や、自身より〈星〉等級が上の〈自由騎士〉に対し、正式決闘を申し入れて戦って勝つ事も、評価の対象になる。


◆要するに冒険者ランクは当人の実力、自由騎士ランクは当人の社会的信用度を現す格好になっている。


◆〈一〇の星〉を持つ〈自由騎士〉になるには、自力で強大な力を持つ魔物の討伐、もしくは世界征服や破壊を期する魔神の討伐を果たし、圧政に苦しむ民衆を助ける為に、悪しき為政者を倒した者でないと、その等級を得る事は出来ない。その為、〈一〇の星〉を持つ〈自由騎士〉は、〈本当の騎士〉または〈勇者〉という俗称で呼ばれる事が多い。


◆ただ大きな戦闘に参加すれば、高い評価を得られてしまう為、偶然にも強大な魔物/魔神討伐隊の端にいて、運良く止めを刺す機会を得た若輩の〈自由騎士〉が、実力的に大した事がないにも関わらず高い等級評価を受ける事になり、却って非常な苦労をする羽目に陥る例もある。そういう事を避ける為に、自己申告式の評価辞退という救済措置も存在している。


◆立場上は〈自由騎士〉ではあるが、実質的に〈正騎士〉身分として活動している人物も存在している。そういった人物は、各国騎士団に掛け持ち所属をしていたり、教官として指導監督する職に就いているケースが多い。


◆また、SR~SSRクラス、それ以上のクラスの〈大いなる騎士〉を独自に保有している〈自由騎士〉も、その国においては実質的に〈正騎士〉身分になっている事が多い。


◆ちなみに基本的な身体能力・耐久力的は、冒険者よりも〈血統騎士〉の方が圧倒的に優位であるが、七等級ランクになると常人として達しうる最高レベルである一〇〇に達する上に、様々な強化スキルが解禁される為に〈血統騎士〉と並び立つ身体能力・耐久力を得られる様になり、六等級ランクになるとレベルキャップがなくなるので、完全に〈血統騎士〉を逆転する身体能力・耐久力を得られる様になる。

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