この恋をどうすればいいかわかりません。
断られることを当然なこととして、恋を終わらせることを覚悟した上での告白。
そもそも学校の人気者でかっこいい彼が私なんかを見てくれるはずがないと分かっていたから、言うだけ言ってすっきりしたいという自己満足が働いた告白だったから、いいよなんて言ってくれると思わなかった。
そんな答えは想定外。
だから、咄嗟に叫ぶだけでまともな反応が出来なかった。
なんで??そもそも私のことなんて知らない、よね?
本人に直接聞きたかったけど返ってくる答えが怖くて、結局聞けないままそんな疑問がその日から頭を離れない。
今日から西野谷は、俺のな?
そう言ってくれたことに満足して。
私が朝日君のそばにいてもいいという許可がもらえたことで舞い上がってしまって、彼の笑顔が自分に向けられたことが嬉しくて仕方なくて。
それ以上は望めなかった。
彼氏彼女という関係だけほしかった訳じゃない。
それは違う。断じて。
彼に私のことを知ってもらえる機会を手に入れただけで嬉しかったから、好きになってもらえるチャンスを与えてもらえただけでも幸運なことなんだから、その機会を失わせないようにしなければと思った。
彼に少しでも近付くために、
だから、今日は自分から一緒に帰ろうと誘うつもりで。
いつも部活のない日は誘いに来てくれる朝日君だけど、自分から誘ってみたくて。
廊下と教室を行ったり来たりしている。
「ど、どうしよぅ、早くしないと、誘えなくなっちゃう」
朝日君からの誘いが先か、はたまた友達との予定を入れてしまうか、そのどちらかで自分から誘うことが出来なくなってしまう。
でも、数少ない経験からして誘いに来てくれていてもおかしくない時間。
ちらっと教室の時計を見るととっくに四時を過ぎていて、冷静になって周りの音を聞いてみると校舎はすっかり静まりかえっていた。
普通に考えて、このフロアには私だけだという結論。
みんなもう帰ってしまっている雰囲気だった。
「...連絡とか、しないものなのかなぁ」
友達とか、または小説やマンガではこんな場合先に帰るとかその後の自分の行動を送ったり送られたりするものだと聞いたけど。
鞄から取り出したスマホには彼からのメッセージは何も届いていなかった。
不意に、想いの度合いを痛感させられた。
度合いも何も、度合いが成立するほどの何かも存在していなかったのだと実感して泣きたくなった。
分かっていたことだけど、改めて思い知るとやっぱりキツイ。
自分だって放課後どうするのかを朝日君に知らせたわけでもないくせに、被害者意識の強い自分に嫌気がさす。
このところの私は、卑屈に磨きが掛かっているようだった。
「確かめる、だけ」
そう、
誘いに行くんじゃなくて、帰ったのかどうかを遠くの方から確かめるだけにしようと、行ったり来たりを繰り返していた足を思い切ってそれよりもっと前へ踏み出した。
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