ぼくはぐんま

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ぼくはぐんま

「俺、群馬から来て・・・」


大ちゃんはいつも、そう言い訳がましく言っていた。

巨漢であるにもかかわらず何処か憎めないその姿はさながらテディベアのようで、よく部屋の仲間達にいじられていたっけ。


大ちゃんは群馬出身。

RIKISHIを目指して入門した大ちゃんは、故郷の事をいつも優しい目で語っていた。


「ほら四股れ!」


稽古の時はいつもしごかれていた大ちゃん。

でも、稽古の後のCHANKOは人一倍食べる。

だって大ちゃん、巨漢だもの。


大ちゃんが作るCHANKOにはこだわりがあった。

下仁田の葱を好んで買っていたし、特に白い部分は甘くて美味しかった。

蒟蒻も沢山いれるのだが、大ちゃんのこだわりCHANKOは何もCHANKO鍋だけではなかった。

ご飯は蒟蒻と牛蒡で炊き込み、鍋には蒟蒻が入った。刺身蒟蒻や田楽なども用意する程の蒟蒻好きで、あの弾力のある食感が大好きなのだとか。

「あかんて!」

食物繊維が豊富すぎて、新井君はお腹を下していたっけ。


「入る入る入る入る・・・入っちゃった。」


大ちゃんは風呂好きだ。

いや、風呂というよりも温泉が大好きなのだ。

群馬は温泉の宝庫。素晴らしい温泉がそこかしこに沸いている。

大ちゃんはいつもそう熱弁していた。


群馬の四大温泉を知っているかい?

伊香保、四万、水上、そして草津だ。


大ちゃんはどの温泉も愛していたが、人ごみの多い所は苦手な大ちゃんは、湯治場然とした四万温泉―――中でも某有名アニメ映画にも出てきた湯屋を彷彿とさせる「積善館」の湯殿は特にお気に入りだという。

身体がデカすぎて入れないのがネックだったらしいが。


「たぐいまれ」


水上温泉郷も大ちゃんお勧めの温泉地だ。

アウトドアレジャーも豊富で、谷川岳の山頂から眺める群馬の景色は、特に大ちゃんのお気に入りだ。バンジージャンプは糸が切れそうだからやった事が無いらしいけど、奥地にある宝川温泉は、紅葉の時期などにはまるで桃源郷にいるような感覚に陥るのだという。

熊と間違われた事があるのはここだけの秘密だ。


「YA ☆ ME ☆ TE!」


群馬の歴史に詳しい大ちゃんは、群馬近郊の産業遺構にも詳しい。

群馬と栃木の境目―――大ちゃんは足尾銅山についても詳しかった。

足尾銅山は栃木県の話だけども、渡良瀬川は群馬県内を広く流れる一級河川である。かつては東京都内まで鉱毒を運んだとも言われている。

大ちゃんから、このような悲劇を二度と繰り返してはいけない―――と、熱く語られた事があるので、一度行ってみた事がある。


日光観光・・・中禅寺湖を手前に国道119号から分枝した国道122号は、意外と曲がる車は少ない。

観光の帰りに通りがかったそこは、深い山々に囲まれ、日が暮れるのが異様に早い。まだ午後3時過ぎだというのに、辺りは薄暗く・・・まるでその恐ろしい歴史を語るかのように、その銅山は姿を現した。


遠巻きに見ても判るほど老築化の進んだその施設を見た時に思ったのは、2011年に起きた悲劇的な大震災と、その後の原子力発電所の災害を被った福島県の姿である。


足尾銅山の事件から130年以上も経過するのに、我々は何を学んできたというのだろう・・・。風化する銅山の姿を見た時、優しそうだけども、少し哀しそうな大ちゃんの目を思い出した。



「行くぞ行くぞ行くぞ~俺の昼飯食ったがや?」


圏央道が東名高速まで開通したおかげで、関東圏から群馬県へのアクセスは格段に良くなった。大ちゃんも帰省しやすくなったと、非常に喜んでいた。

でも大ちゃん、そのバイクじゃ高速道路は乗れないよ?


そんな大ちゃん、最近悩んでることがあるんだって。

圏央道から関越道に合流すると、群馬県はもう目と鼻の先だ。

少し肥料臭い嵐山付近を抜けると、ほらもう藤岡市だ。正面には榛名と赤城の二名山が見える。綺麗だなぁ。


長野や栃木に行く人は上信越道、北関東道のジャンクションに入る前に上里SAで給油するのを忘れずに。

でも新潟に行く人は大丈夫。

ジャンクションの先には赤城高原SAがあるのだから。


そう、大ちゃんを悩ませている奴は赤城高原SAで見つかった。


からっ風ブー太郎―――。

最近、群馬県内のあちこちでこいつが幅を利かせて困っているらしい。

御菓子、キーホルダー、ラーメン、豚丼―――。

なるほど、あらゆるところにからっ風ブー太郎が出現している。

グッズコーナーまであるじゃないか。(呆れ)


何でも、大ちゃんの話では「キャラが被る」ってのが大問題らしいけど・・・。

大ちゃん、あのさぁ。

キャラが被るとか以前に、大ちゃんの方がずっとずっとデカいから。

大丈夫だよ、大ちゃん。


ん?なに?


「SHI ☆ NE!!」


輝け!からっ風ブー太郎!って事かな?

ライバルにエールを送るなんて、偉いね大ちゃん。


*  *  *


「支援支援支援支援・・・!」


大ちゃんは群馬が大好き。

ロマンティック街道沿いにあるロックハート城も、何故か餃子の満州が経営してる旅館がある老神温泉も、川底で尻が焼ける尻焼温泉も、初見殺しにも程があるグンマンも、割とキャラかぶりなマンザマンも、高速道路の外からも入れるハイウェイオアシスららん藤岡も、念願の世界遺産になった富岡製紙工場も、ナイトキッズ中里はいないけど猿は出る妙義山も、みんな大好きさ。


YOKOZUNAになった時の夢を聞いてみた。


KENSHOUKINが入ったら、大ちゃんは大好きな群馬に帰って―――


憧れのドイツ車で秋名のダウンヒルを攻めたいそうだ。


スバルじゃないのか・・・。(困惑)




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