女子高生はバイト君が気になる。

@syozai

第1話 


 「起立、礼。」

 ”ありがとうございましたー”




 ”やっとおわったー!” 

 

 ”どっかいこうよー” 

 

 ”おい!早くしろ!先輩たちに怒鳴られるぞ!”


 授業が終わり、放課後となった校内は活気に満ち溢れている。

 

 部活に励むもの。

 居残って勉強をするもの。

 遊びに行く計画を立てるもの。


 もちろん、私だってその例には漏れない。

放課後と昼休みを知らせるチャイムは私にとって、常に待ち遠しいものなのだ。


 「おーい、あすか。帰る準備できた?」


 「もち! さっ、いくわよ!」



 

 私こと、あすかは放課後になると必ず街へと出かける。

この学校は市内にそれなりに近く、交通の便もそれほど悪くない。

私と隣にいる友人のゆきと一緒に街へと出かけることは、もはや日課とも言える行為だ。



 街にはなんでもある程度揃っている。

服や小物、飲食店に遊戯店。

ここにくれば時間を潰すことは容易にできるだろう。


 私とゆきもその中の一人…いや、二人だ。

いつもなら、これまで通りだらだらと時間を潰すのだが…今日は違う!!


 私は街の中にある一軒の気になるお店を発見した。

中から漂ってくるその香りに、昨日の私は立ちくらみさえおぼえた。

しかし、持ち合わせがなくどうすることもできないまま立ち尽くしていた私にゆきは、

 

 (明日来ればいいじゃん。)


 なるほど…っ!流石はゆき…、伊達に私の友達を名乗るだけはあるわね!


 (あんたの今の顔、すげーむかつく。一発殴っていい?)


 

 そうして素早く明日の予定を決め、私たちは帰路に着くのだった。


 …私は右頬をさすりながら。





そして今日!いま!現在!その目的のお店の前に私たちはいる!

……のだが。


「CLOSE…。OPENは6時からって書いてあるよ。」


 なんということ…!?私としたことがこんな基本的なことを確認しなかったなんて!


 くう…確かに、お店から昨日漂っていたあの香りはしないっ!

どうする…出直すか、だがあと2時間はあるぞっ!?



「まあ、残念だけどさ。そこら辺でてきとーに時間潰せばすぐでしょ。」


「ええ…」


「ほら、さっさといくわよ。…あ、洋服見ていってもいい?気になるのがあったんだよねー」


「ええ…」


「もうすぐ夏だしさー。そろそろ夏服揃えておきたいんだよね…ってあんた、人の話聞いてんの?」


「ええ…」


「はあ、だめだこりゃ。…はい顔こっちにむけてー?一発いっとけばもとに…」



          「「突撃っーーーーー!!!!」」



「……は?」


 目標を前にして撤退はありえない!!パパもそう言ってた!当たって砕けろよ!


ガチャガチャ!

 

 「くっ、やはりカギはかかってるか…ええい、ままよ!」

ドンドンドン!!


 「ちょ、このっ…バカ!なにやってんのよバカ!やめなさいよバカ!恥ずかしいでしょバカ!!」


 「バカバカうるさーい!!…すみませーん!開けてくださーい!私たちお腹すいてるんですー!お恵みをー!神のご加護をー!」


 「あー!やめろって!まじ恥ずかしいからああ!」


ドンドンドン!!

 

 「っ…この、いい加減に…「はいはい、いま開けますよー」…!?」



 「いまの聞いた!?やっぱ何事も当たって砕けろなのよ、ゆき!」


 「言ってろ、バカ」


そうして私たちはついに、その未開の地へ足を踏み入れるのだった…。 




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