君の笑顔と、それから...
えってん。
一話 吹き抜ける。
吹き抜ける。
高校二年生、
すこぶる早い。
「おはよー」
朝五時半に起床し、
「行ってきまーす!!」
洗顔、着替え、歯磨きなど身嗜みを整えたらすぐに家を飛び出して登校する。
その時間、六時十分前後。
下ろし立ての制服に身を包み、まだ殆ど人の通らない道路を自転車でかっ飛ばしていく。
そんな生活はつい最近始まったばかりで、父親の転勤の際新しくこの町に引っ越してきてからは毎日続いていた。
この春転校した一は、あまり裕福ではない家の経済力を気にして自転車通学を申し出た。
といっても、自転車通学が一般な場所には住んでいなくて、この辺りの同じ高校生は皆バスや電車を利用している。
のだが、定期を使ってもただではない通学費用が勿体ないと、公共手段での通学を断固拒否したのだ。
朝早く夜も暗くなるまで帰れないため当然両親は反対したが、三つ年上の
というか、一旦決めたらそれしかない性格なのでそうするしかなかったと言った方が早い。
すでに社会人の兄は九時六時の勤務なので、その時間に適当なところで待ち合わせて一緒に帰っていた。
この日もいつもの場所で待ち合わせる段取りをして、弾丸のごとく飛び出した。
上記で察しがつく通り、おてんばじゃじゃ馬がよく似合う活発な女なのである。
あの子ももう少し大人しければ...とは母の口癖だ。
大人しければ彼氏もできるのにと常日頃、昴とやや愚痴っぽく話している。
好奇心旺盛で物怖じせずぶつかっていくので、あんな男勝りで彼氏ができるのかが目下のところの悩み。
見た目も顔も、可愛いのに....は、兄である
親バカ兄バカの見解も否めないが、大人しくしていれば清楚で可愛く見えるのに勿体ない見た目というレッテルを貼っている。
目鼻立ちははっきりしていて手足も長く、小生意気に見える八重歯なんかもある愛らしい顔つきなのに喋るとこう、がさつなのだ。
豪快に笑うし思ったことも特に頭の篩にかけること無く口から出してしまうので、好き嫌いが別れるタイプの人間だ。
もう少し、後少しだけでいいから女らしく大人しい所作も身に付けてもらえたらどれだけ心配の種が減るか...。
勉強の事より、多少恵まれて生まれた容姿を無駄にしていることを酷く残念がっていた。
「も、もぅ、めっちゃしんどいっ」
親や兄の心配など知るよしもなく、自転車を立ち漕ぎして坂道を登り中の一が、息を詰まらせつつ長年慣れ親しんだ関西弁でがっつり今の心境を口にした。
生まれも育ちも関西なので、越してきた標準語圏内にはまだまだ親しめていない。
というか、関西弁が母国語としているので特にこちらの言葉に変えようというつもりもない。
自然に変わるならそれもよし、無理してこっちの言葉に合わせる努力はしないというだけの事だ。
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