誰にも知りえない

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第1話 カンチって呼んでおくれ

 春の坂。大学へ続く長い道。

まだ始まらないキャンパスライフ。門をくぐってしまえばもう始まる。

一人暮らしなんてしないって思ってたのに。寂しくてたまらない。

けど今、にぎやかなムードへと足を運んでいる。大丈夫。

そんなことを思いながら、俺のキャンパスライフは幕を開けた。


「ねえ君、名前なんて言うの?」

隣の席に座った誰かが話しかけてきた。

「冬樹。県外から来たんだ。よろしくな」

「おう!俺は亮。よろしく!」

見るからにいい人なのだけど、結構面白そう。これからが楽しみである(笑)

「そういえばさ、同じ学部に高校の時のミスがいるはずなんだよ。有紀って子なんだけど。」

亮がきょろきょろし始めたもんだから、こっちにみんなの視線が注がれる。

「えっそうなんだ」

「あ!いた!!神山さーん」

あ。こっち向いた。

「遠野くん。迷っちゃった(笑)」

凛とした瞳、白い肌。優しい声。秒で惚れた。

「今話してたんだけど、こちら冬樹!」

「神山さんていうんだ、よろしく」

神山さんがこっちを見る。心臓よ止まってくれ。

「うん、よろしくね。有紀っていうの」

その時、もう一人女子が来た。

「有紀~ごめん遅れた」

「あの子は恵奈っていうんだ。俺らと同じ高校!」

「恵奈。よかったいて」

「有紀もう友達で来たの!?ていうか二人お似合いなんだけど!!」

彼女は俺と神山さんを指さしている。なおさら恥ずかしい。

「ちょいちょいちょい。俺を忘れるな!」

遠野、神山さん、加瀬さんか。とりあえずキャンパスライフ、やっていけそうだ。


「あれ!あんた!その足はサッカーやってたろ?」

ごった返す講義室を颯爽と走ってきた人がこっちを向いて何かを言っている。

そう、俺の足に…。

「はい、中高とやってました。」

「ならば我がフットサルサークルへ招待しようじゃないか。名はなんと申す!」

「加藤冬樹です。よろしくおねがいします(笑)」

「おう!!」

他の三人は知らんふりである。おい。

「俺のことはカンチって呼んでおくれ!」

「カンチ!?」

4人して驚愕である。そう、ラブストーリーは突然にの…

「せいぜい大学生活楽しめよ!じゃあな」

カンチさんは帰って行った。

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