こんな夢を見た/夕暮れの高校

青葉台旭

1.

 私と、私の父親は、誰も居ない放課後の高校に居た。

 教室の中は、夕暮れの赤い太陽の光が差し込んでいて、真っ赤だった。

 私は一冊のノートを手に持っていた。

 ノートのページには、私自身の手で、とても公表できないような恥ずかしい文章がびっしりと書き込まれていた(しかし内容は、もう思い出せない)

 夕日で真っ赤に染まった教室の中で、私と父親は二人きりで何事かを話していた。(内容は、もう思い出せない)

 突然、扉が開いて、私の同級生の少年が一人、教室の中に入ってきた(少年の名前は、もう思い出せない)

 丸刈りで、身長は私より低くガッシリとした体格の少年だった。

 私は「放課後の高校に、まだ残っている生徒が居たのか」と、驚いた。

 丸刈りの少年は、私と私の父親の所まで来て、父親に「○○県は住みやすいか?」と聞いた。父親は若い頃○○県にしばらく住んでいたのだ(県名は、もう思い出せない)

 少年は、私の父親と話しながら、チラリ、チラリ、と私が手に持っているノートに視線を向けた。

(こいつ、俺の大事なノートを盗み読むつもりだな)

 私は、そう思った。用心しなければ、とも思った。

 しばらくして、同級生は教室から出て行った。

 私は同級生の居ない間に、大事なノートを埃の積もった背の高いロッカーの上に隠した。

 私が教室から廊下に出ると、夕日で真っ赤に染まった誰も居ない廊下の向こうの端に、先ほどの同級生がポツンと一人だけ立っていた。

 同級生は全裸だった。股間に黄色い粘土ねんどのような塊を、べたっ、とり付けて、それでチンチンを隠していた。

 同級生の立っている廊下の向こうの端には、男子更衣室があった。

「おーい」

 男子更衣室の前で、同級生が私に向かって手招てまねきをした。

 私が近づいて行くと、全裸で股間に黄色い粘土ねんどのようなものをり付けてチンチンを隠した同級生が、手に同じような黄色い粘土ねんどの塊を持って言った。

「今日から、この高校の制服が変わった。これが体育の授業で使う競泳用の水着だ」

 そう言って、手に持った黄色い粘土ねんどのようなものを私に突き出した。

「お前も、早くこの水着に着替えろ」

 ああ、そうだ、次の授業は体育で、しかも水泳だったのだ、と放課後の廊下で私は思った。急いで競泳用の水着に着替えてプールに行かなければいけない。

「これは、何だ?」と、私がたずねると、友人は「カレー粉と小麦粉を混ぜてねたものだ」と答えた。

 私は大急ぎで男子更衣室に入り、全裸になって、カレー粉と小麦粉を混ぜてねた粘土ねんどのような塊を自分のチンチンにり付けて、チンチンを隠した。

 ふと、同級生が居ないことに気づいた。

 あわてて、全裸で股間にカレー粉をり付けただけの姿で廊下に出てみると、やはり全裸で股間にカレー粉をり付けただけの同級生が、廊下の向こう側の教室に入って行くところだった。

「しまった、奴め、俺の大事なノートを探し出して盗み読むつもりだな」

 私は、全裸で股間にカレー粉をり付けただけの姿で、大急ぎで先ほどの教室に戻った。

 教室の扉を開けると、同級生は私のノートを探し出して、ちょうど開いて読もうとしている所だった。

 私は同級生の所に走り寄り、ノートを手繰たくった。

 危うく、大事なノートを読まれずに済んだ。

 友人は残念そうな顔をしたが、何も言わなかった。

 なぜか手を洗いたくなったので、私は全裸で股間にカレー粉をり付けただけの姿で廊下に出て、手洗い場で手を洗った。

 すると先ほどの友人が、全裸で股間にカレー粉をり付けただけの姿で私のところに来て言った。

「次の授業は化学実験だぞ。はやく化学実験室に行こう」

「化学実験室で何をやるんだ?」と私がたずねると、友人は「カレー粉をウラニウムに変える実験だ」と答えた。

 答えながら友人は、私が手を洗うためにわきの下にはさんでいたノートを、鋭い目で見た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こんな夢を見た/夕暮れの高校 青葉台旭 @aobadai_akira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ