役に立たない名探偵

ミルキー

第1話プロローグ

----死にたい。

 終電に揺られる中、真っ暗な窓の外を見て、私、にいざわうめはそんなことを思っていた。


私は、小さい頃から勉強ばかりしていた。

将来のために、将来好きな事をできるようになるために、ずっと勉強をしていた。

そのおかげで、中学受験で名門中学に合格し、首席で卒業。

そして、日本一難しいと言われる大学に合格。

受かった時は本当にうれしかった。

今までの努力が報われた。明るい未来が待っている。

そう、思っていた。


 しかし、現実は違った。

 私は大手企業の社員になり、どんどん昇格していった。

その陰で、悪口をたくさん言われるようになった。

「新沢さんって頭しかないよね」

「頭いいからって社長のお気に入りになろうとしてるよね」

「調子乗ってる」

「私たちの仕事もやってくれるんじゃない?」

 それから悪口はひどくなり、いじめが始まった。

「新沢さん、この仕事よろしく」

「新沢さん、この会社にいらないんじゃない?」

ペンケースが何度もなくなった。

パソコンのデータが消されていた。

ロッカーの中がぐちゃぐちゃになっていた。

終電ギリギリまで働かされた。

 初めは、この人たちはなんて幼稚なんだろう思っていた。

負けないように、頑張っていた。

でもそれは最初だけ。

 もう、抗う気力もない。

今までの努力は何だったのだろう。

 疲れた。人生に。

 








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