わたしのおまん
風々ふう子
第1話
わたしのおまんが、わたしだけのおまんが、なぜわたしから離れていったのか。まずはその経緯から話してみようと思います。
それはひどく濡れない夜でした。その日の殿はとても急いていて、乱暴に自分のズボンとパンツを降ろすと、力強くわたしの腕を掴んで引き寄せるや否や、まだ乾ききったわたしのおまんに挿れようとしたのです。
「待って。まだ濡れてないの」
「知らねえよ! ビチグソ」
わたしが言うと、殿は吐き捨てるように怒鳴りつけました。
「乱暴な人は、嫌われますよ」
「だからなんだよ? 俺はお前の身体が好きなだけで、お前の精神や人格には一つも興味ない」
「まあ! なんてこと!」
わたしはひっくり返りそうになりました。どうやらわたしは最初から愛されてなどいなかったのです。落胆したわたしにお構いなく、殿はせっせと自分のおちんを硬くし始めました。
殿は畳の上にわたしを押し倒し、自分のおちんの標準を合わせ、わたしのおまんを射ようとしました。
「待って、本当に濡れてないの。痛いのはいやだわ」
「うるせえよブス」
膨れ上がった殿のおちんが、わたしの乾ききったおまんを襲いかかりました。ゴムの被らないつるつるの赤褐色です。わたしは殿の身体を押しやり、必死の抵抗を試みましたが、物理的な力では到底勝てるはずもありません。徐々に殿のおちんが近づいてきます。そして遂に、おまんから柔らかい感応を受け取りました。わたしのおまんはまだその気分ではなく、矢張りひどく乾いていました。
殿が微調整を加えながら標準を定め、痛がるわたしを横目に、おまんの中腹に挿れたその時です。
「待って! 痛いのはダメ!」
それはわたしの声ではありませんでした。とても甲高い声で、もちろん殿の声なはずもありません。殿はびっくりして挿入の手を止めました。
「ふざけないでよ、あんた達。まだ全然濡れてないし、しかも今日生理じゃん。なに忘れてんのよ」
わたしはうっかり忘れていました。そうです、今日は多い日だったのです。そしてどうやら、その声はわたしのおまんから聞こえているみたいでした。
「おい、おい、なんだよこれ。きもちわりいよ。誰が喋ってんだよ。お前、腹話術でもできんのか?」
「わたしじゃないわ。きっと……、わたしのおまんよ……」
「わたしのおまん? 訳わかんねえこと言ってんじゃねえよ」
「いいえ、わたしはおまんよ」
わたしのおまんは殿に返答しました。
「わたしは意思のあるおまんなの。数億人に一人の確率で、先天的な生き物おまんが生まれてくるの。そう、わたしはおまん」
「わたしのおまん……!」
わたしは何か底知れぬ感動を覚えました。数億人に一人の確率で生まれてくる、生き物おまん。思わず涙が溢れ出しそうになりました。人はわたしのこの気持ちを、なんと呼ぶのでしょう。
「けっ! なんでもいいぜ。喋ろうが意思があろうが、気持ちいいことには変わりねえ。普通に挿れさせてもらいますわ」
「まあ、ひどいわ! わたしのおまんが可哀想だわ!」
その時です、部屋中に無数の閃光が走り、わたしのおまんから衝撃波のようなものを受けました。殿のおちんは弾き飛ばされ、反作用の法則でわたしの身体も後ろに飛び、
「あなた達には付き合ってられないわ。あなたのおまんになるのも今日限りね」
わたしのおまんは一言そう言うと、ぴらりぴらりとわたしのお股からひとりでに剥がれ落ち、ヒラメのようになって飛んで行きました。
「ああ、わたしのおまん……!」
わたしはもうマスターベーションが出来なくなるという悲しみで、思わず泣いてしまいました。
わたしのおまん 風々ふう子 @Fusenkazura5565
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