第80話

「あの小娘ミアに何を言われたのか・・・」

 また気を失ったタウをゆっくりおろして考える。

 この子がこんな感情を出すなんて・・・


 セリスの方に加勢しに行くか旦那様の方に行きたいが・・・タウをこのままにしておくのも問題じゃな。しかし、かといって動かせないが・・・

「な、なんじゃ、この状況は・・・」

 そんな中まだ状況を読めていない奴が一人。

「お前さん腐ってもギルド長じゃろ・・・?」

「こ、こんな状況今までなかったのじゃよ!ダンジョンに行くときはゴウガをうまくコントロールする奴がいたし、ギルドは基本的にスキルでどうにかなる奴らばっかりだし!!」

 吸血鬼よ・・・

 わたわたとうろたえる姿は見た目通りというかなんというか・・・

 本当に自分のスキルに過信していたのじゃなあ。

 でも、いいところにいた。

「吸血鬼」

「な、なんじゃ!」

「タウを頼む」

「え、あ、うむ」

 ・・・なんか旦那様のおかげなのか・・・それでいいのかというくらい従順じゃな・・・

 支配してきた側のはずじゃろうに・・・

 なんというか不憫な気がしてきたのお。

 そんなことを考えながら、セリスの方に向かっていった。

 ゴウガの方はヘファスとジークがうまく足止めしてくれている。

 まずは、あの小娘をどうにかするのが先じゃな!

「セリス!加勢する!」

「ハク殿!あちらは大丈夫なんですか!」

「うむ!だから、ここを突破することだけを考えよ!」

「分かりました!・・・ということでそこを通らせてもらいます」

「・・・やっぱり考え直す気はないの?」

「ありません」

「そう・・・残念」

 少し今までの冷静な顔とは違う寂しそうな顔をしてくる小娘。だが、その顔とは裏腹に動揺しているようには見えない佇まいであった。

 だが、


「じゃあ、私の邪魔をしないで」

「「!!」」


 いきなり雰囲気が変わった。そして、


「まずは、その竜人ハクから斬ってあげる」


 いつの間にか私の懐に小娘がいた。


「させません!!」

 私の腹に突き刺さる寸前だった大剣を受け止めるセリス。

 セリスの動きまでも全くと言っていいほど見えなかった。

 私はこのことで改めて痛感する。

 まだまだ私は弱いのだと。

 これだから、旦那様のそばにいるのは楽しいな。

 私はその想いをこれからも続くように、

「まずは、貴様を倒して旦那様を守ってみせる!」

 私はさらに高みに!

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