第79話

 side ハク

「タウ!」

 私はタウに駆け寄る。

「うぅぅ・・・」

 息はしているな。じゃが、意識はほぼない状態・・・あばらは数本折れておる・・・

 吹き飛んだ時に運よくなのか、下に落ちなかったのだけがラッキーじゃ。

 しかし、タウほどの奴をこんなにするとは・・・あの娘あやつもゴウガと同じで化け物のような強さじゃな。

「と・・・そんなことを考えるより。・・・よし、こいつじゃ」

 私が取り出したのは緑の瓶。この中に入っているのは、旦那様特製の回復ポーションじゃ。

 なぜ、旦那様特製というかというと。


 しゅうううう。


 その音とともに様々な傷がなくなっていく。すると、気を失っていたタウが疲弊した表情で目を覚ました。

「・・・ハ・・・ク様?」

「ふむ。ほぼ完全に治ったか」

 そう、このポーションは飲めば、ほぼ完全に傷と魔力を回復させる。

 普通、このようなポーションは大きく分けて二つ。

 傷を回復させるものと魔力を回復させるものだ。

 ある程度治すのものなら市販されている。

 ちょっとした量なら下級。傷なら軽い切り傷が治る、魔力ならファイアボール一回分ほどだ。

 その上に中級、上級がある。性能良いものになるにつれてそれだけ高く売られているのだ。

 ・・・こんな知識も必要な時が来るとは思わんかったなあ。

 まあ、それは置いておいて、そんな中でこのポーションは、どちらもほぼ瀕死ではない限りほぼ治せるという。

 普通に売れば、かなり高額で売ることができるだろう。

 それこそ、今住んでいるあの家も簡単に手に入るだろう。

 そんなポーションをさらっと作ってしまうのが旦那様らしいが。

「ハク様・・・私どれくらい眠って」

「これ、無理に立ち上がるでない」

「で・・・も・・・」

「旦那様特製のポーションを使ったのじゃ。旦那様も言っておっただろう。傷や魔力は治せるが、体力は簡単には戻らないからよっぽどのことない限りは動かない方がいいと」

 今のタウを見ている限り傷は治ったが、動くのだけで精一杯のように見える。

 そこだけがデメリットだと旦那様は悩んでいるが、正直国家レベルで影響を与えるものなのだが。

「今・・・動かないでどうするんですか・・・!」

 それでも立ち上がろうとするタウ。

「だから、安静にしていろと」


「私があいつを止めないといけないんです!!」

「!!」


 その叫びはかなり鬼気迫るものだった。

 それはいつものタウとは違う、冷静さをかいたものであった。

「お主・・・なぜそんなに・・・」

「わたしがやら・・・ないと・・・」

 そう言ってまた、タウは意識を失った。

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