第67話


「おやつはどこ・・・じゃああ?!?!」

 颯爽と扉を開いたと思いきや大声を上げて驚いているのはギルド長ことユリア・スカーレット様。職業吸血鬼であり、この国では上位クラスで強いとされているこの方ですが、

「あ、ユリアさんではないですか」

「ひいいいいい!お主たちがいるということは!ご、ごじゅ人、ご主人様もいるのか!」

 ・・・このように主様に敗北し、眷属になった今では、主様に逆らえないようになっている。

 最初は眷属化の効力で命令を出していたが、最近では恐怖心に負け、素直に従っている節がある。というか命令されることはまんざらでもなさそうだ。

「大丈夫ですよ」

「・・・なんじゃ・・・心配して損した。毎回毎回あの鬼畜ご主人様め。驚かせよって」

「まあ、下の工房にはいますけどね」

「すみませんでしたあ!!」

 私のひとことでさらっとジャンピング土下座を繰り出すユリア様。体に染みつくほど、躾けられていますね。

『フハハハハハ、これは滑稽だな』

「な!シルフィードも来ていたのか」

『当たり前だろう。なんやかんやハルオミは面白いからのお。こんなお前を見れるなんてますます面白い!』

「ぐううう!」

 そんなシルフィードをからかっているのはシルフィード様。かなり長い付き合いらしい。そこにもう一人、

「ギルド長であるものがそんな体たらくでよいのですかのお」

「く、黙れ、ジーク。お前はご主人様の怖さを知らないのだ。というかお前いたのか」

 元剣聖ジーク様。この国に長いこといるのでやはり長い付き合いらしい。

 あ、そういえば途中から確かに姿を見かけませんでしたね。

「フォフォフォ。実は先ほど急に始まったお話で私のセリスをたぶらかそうとする勇者ハルオミがいることがわかりましたので少し話をしようかと」

「・・・お前もたいがい親バカというかじじバカじゃな」

 なるほど。それで剣をお持ちになっているわけですか。

 ですが、少しがっかりしているご様子だ。

「いやはや全くその通り。しかし、下に行ってみたのですが扉が開かなくて・・・」

「は?」

「ん?気づいてなかったのかのお??」

 唖然とするユリア様。そこに少し口を出すハク様。

「気づいてなかったって・・・」

「先ほど下の工房に結界が張られ、空間魔法に覆われているぞ」

「にゅ?!あの大きさの空間にか?!」

『うむ、しかも、様々な耐性もついておる。大方ハルオミのせいだろうな。ふふ、楽しみだ』

「・・・もう本当にいやあ、ご主人様・・・」


 そして、再び崩れ落ちるユリア様だった。

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