第44話
「やあ!」
「よっと」
「なあ?!」
「力抜け~」
「く!ならこれなら!!!」
「ほい」
「そんなあっさりと?!」
ふふ、甘い甘い・・・今俺は継承に向けて部屋に籠っているジークの代わりにセリスの稽古に付き合っていた。前からこの世界の剣術に関して興味のあった俺は快く稽古という名の観察会をしていた。
スキルで持っていたとしてもどんな動きをするかどうかをわかっていたほうが体も動かしやすい。
俺は確かにスキルを得ることはたやすいが、スキルの外に出るような型や精密さはやっぱり本職には劣るのだ。この鑑賞会のおかげでだいぶ剣の動かし方が分かってきた感じはする。
ゆえにヘファスにもあの後剣づくりを見せてくれるように頼んでおいた。本人はこれ以上うまくなられたら俺の存在意義がとか言ってたけど。
・・・うーん、
「セリスさん?肩の力入りすぎじゃないか?」
「やめてっ!ください!ハルオミ殿!私のようなものにさん付けなど!」
「んじゃあ、セリス?もう少し肩の力抜いたら?から回っている気がするんだが」
「!そ、そんなことは、」
「よっ!」
俺はあきらかに動揺したセリスのスキをついて剣を吹き飛ばす。
「・・・参りました」
「じゃあ、いったん休憩で」
「!い、いえまだ!」
「俺が休憩したいから」
「は、はい」
本当はまだまだ相手できるけど、明らかに焦っている感じがするセリス相手じゃ、剣聖のなんだっけ?なんとか流剣術の型がいまいち分からない。
なんていうんだろうか、剣術家らしからぬ剣術の雑さがある気がする。
「その辺どうだと思う?アストレア」
「何というか私がもう心読んでいる前提で聞くようになりましたね」
そりゃあな。でどうなの?
「心の中で聞かないでください・・・実際問題焦っていると思いますよ。やはり剣聖になるという重圧と狙われているということがさらにそれを焦らせていると思いますよ」
「さらに?それが一番の原因じゃないのか??」
「・・・それは彼女自身から聞いたほうがいいです。私としては不本意ですが」
「ん?」
なんで俺がセリスから聞くことが不本意なんだ?
「・・・教えません」
・・・なんだそりゃ。
「主様」
「どうした、タウ」
「玄関の方に訪問者です」
「・・・ああ。了解。セリスは?」
「汗をかいたということで浴室の方です」
「ならタウとアストレアはシルと一緒にセリスの面倒をみてやってくれ。俺は面倒だがその訪問者の相手してくるわ」
「かしこまりました」
「ハクは俺についてきてくれ」
「うむ。では、シル。行っておいで」
「はーい!パパ、ママ行ってくるね!」
「おう」
「だいぶお父さん役が板についたのお、旦那様」
「そんなことねえって」
「ほほう・・・ちなみにこの前少し町に行ったらな。シルに言い寄る冒険者が」
「・・・今すぐそいつの名前教えろ」
「・・・冗談じゃよ」
「本当か?!最近シルの愛くるしさが上がってきているから心配なんだが・・・」
この数日間でさらにかわいらしさが増してきた気がする。この前「パパー!大好き!」と言って花をくれた時は天使かと思ったわ。
「・・・意外と親バカなんじゃね、ハルオミは」
「そんなことない」
「
「デストロイ」
「・・・」
おい、なんでそんな目で見る。全く・・・俺はただ悪い男に引っかからないようにしているだけだ。
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