弱小高校が甲子園へ行けないのはモチベーションの問題
ジョーラレン
第1話 監督の苦悩 1
私がこの学校に来たのはつい1ヶ月ほど前、野球部の顧問、まぁ監督というものを任されたのは私は大学まで野球をしていたから…や、野球の知識が豊富だから…とか、そんな理由ではなくてただ単に若いからという安直な考えからだった
そして気付いたことがある…。
そう、部員全員へたくそだ!
いや、正式に言うと練習には来る。来るのだが問題なのは恐らく練習方法が間違っているのだと思う。普通な素振りしているだけ、確かに素振りは大事だ。ノックでもしっかりさばく、すごく普通だが基礎を固めるのはいいことだ。
なのに…!なぜ上達しない!
それが俺にはわからない!…と、まぁ前置きが長くなったがなんとなく現状は分かってくれたかな?
俺はやるからには一番を目指す主義なんでね、なんとしてでも甲子園に行きたい。
できるかはわからないが…。トホホ…
『キーンコーンカーンコーン』
全授業が終了し、全ての生徒が肩をおろした。
しかしこいつら生徒は俺が「終わります」を言う前にノートとかを片付けやがる…。
7時限目の生物学は破壊力が高いのか寝ている生徒もいる。これは俺がつまらない授業をしてしまうせいでもあるが…。
続々と生徒が部活の服に着替えたり、購買へパンなどを買いに行ったりしている。
よく見ると野球部の1人が着替えようとしていない…。ここは問い詰めてみるか。
「おい、どうした。今日部活来ないのか?」
「あー、すいません。部活の服忘れちゃって。今から取りに行ってきまーす。」
こいつは【
よくバレバレの嘘をついてサボる常習犯。
片道1時間半かかるのに服を取りに帰ってたら部活に間に合わないだろ、とツッコミたくなる。
「たくしょうがないなぁ、羽賀。」
全然しょうがなくねぇよ…。
何してんだよ…俺…。
「てか、先生。今日雨降ってるよ?部活無理じゃない?」
【
「あぁそうだなぁ。雨だしな、今日は中止だ。他の奴らにも伝えてくれ」
なんでだよ…!普通野球部は雨の日には筋トレとか階段ダッシュするんじゃないのか!
あぁ、心の俺は強いのに表の俺は流されやすいのか…辛いなぁ…。
「よし、帰りにゲーセン行こうぜ。」
そう小瀬村が言うと着替えていたものまで頷き制服に着替え始めた。こいつらに俺は恐らくなめられてる。きっとそうだろうな。
午後8時半に一通りの仕事を終えた俺はそのまま行きつけのラーメン屋に寄った。このラーメン屋はとにかくスープがうまい。最後にスープを飲み干す為に麺をすすってると言ってもいいくらいだ。それだけでも来たくなるのにこの店は俺の高校時代の親友のおかもっちゃんが店長だからより毎日来たくなる。
「いらっしゃーい。なんや、ふくもっちゃんか。挨拶して損したわ。」
おかもっちゃんは東京から転校してきた俺が一番初めに喋れるようになった親友だ。
相談事もおかもっちゃんにしかした事がない。
「なんなんそれ。それならお代おいて帰るわ」
「毎度!ごひいきに。」
俺がこの店に来た時は必ずこのくだりをする。
いつものようにカウンター席に着いた俺を見ておかもっちゃんは言った。
「なんやえらい考え込んでるようやな。顔がしわくちゃやで。」
やかましい。と、ツッコミたいがズバリ図星だった。高校時代からおかもっちゃんは勘が鋭い。心の中が読まれているようだ。いや、もしかしたら俺は考えが表情に出てくるのかもしれない。まぁどっちでもいいが。
「そーなんよ。ほら、前に野球部任されたって言ったやんか。なんかうまくいかないのよ。」
「うまくいかへんってどないやねん。」
俺は部員が部活をしようとしない事や、自分が部員に舐められている事を告げた。
「はぁ?そんなん決まってるやんか。」
予想外の返答に正直驚いた。自分で考えてもわからないことをおかもっちゃんはいかにも知っているかのように言ったからだ。
「え?どういうことなん?」
「モチベーションや、モチベーション。」
モチベーション…。最初は意味が分からなかったが、言われてみればあいつらが野球をしようとしないのは野球をする事にモチベーションがないからなのかもしれないと思った。
昔にビックリマンのシールを集めていた事があったが、コンプリートする前に買うのをやめてしまった事がある。それは当たらないとかそんな理由じゃなくてシンプルに飽きたからだった。今のあいつらは野球に飽きているだけ。いや、今までの、俺が来る前の野球部達もモチベーションが足りなかったから上達しないしやる気も出ないんだ。
その後おかもっちゃんと軽い談笑をしながらスープを飲み干した俺は、どうしたらあいつらのモチベーションをあげる事が出来るかを考えながら電車に揺られた。
弱小高校が甲子園へ行けないのはモチベーションの問題 ジョーラレン @jorujoru2000
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