TWO ROOMS

明神響希

第1話 One romm_One man

 最近騒がれてる経済回復政治だがなんやら。その先導者が討論を交わしている真面目なニュース番組より、くだらないお笑いを見ている方が人生有意義だ。そんな結論を出したのはいつ頃からだっただろうか。けど俺は若い頃からずっとニュースよりお笑いを優先していたから、結論を出したというより言い訳にようなものを作った、という方が正しい。休日の正午過ぎ、出掛ける予定もないから着替えることなく、冷蔵庫の余り物を適当に混ぜた炒飯を食べながら、若手芸人のギャグにひと笑い。そんないつもの休日は、慣れが詰まったおんぼろアパートの一室で綴られる。

 蝉の必死な求愛は窓の外から永遠と聞こえるが、慣れたもんで苛つくこともなくなった。壊れたクーラーを修理に出さなくとも、扇風機一台で生きれるようになったのも慣れ。汚い部屋でも普通に生活出来てるのも慣れ。給料が上がってもこのボロいアパート引っ越すことがないのは、この慣れを手放したくないから。何て言うのはまたもや言い訳で、本心は片付けが面倒臭い。この1言に尽きる。

 気付けば、言い訳を並べて生きるようになっていた。この2つ隣の小さな町で生まれ、社会人になると同時に1人暮らしがしたいが為に故郷より少し都会なこの街の家賃が安いアパート__正式名称は「深毬荘」__の一室__2LDK。風呂トイレ付き__に引っ越し、一般企業の社員。顔が良くモテて調子に乗っていたら、いつの間にか30代後半。周囲の友人は結婚し、幸せな家庭を築き上げていて。身軽が良いから、とか、拘束されるには好きじゃない、とか。言い訳を並べて生きることに何の疑問も覚えず、毎日の繰り返しで今日を生きてきた。多少の後悔と、未来への不安と、確証のない自信と、妙なプライドを抱えながら。

 今日も、毎日の繰り返し。積み重なるのは過ぎていく時間だけ。永遠と命ある限り続くと思われるその日常。少し変化が訪れたのは、最近話題の若手芸人のギャグが終わり、CMが流れた時だった。


__ピンポーン、ピンポーン__


 繰り返し押された呼び鈴。古い為か少し掠れたような独特な音声に腰を上げた 。前にネットで注文した服がそろそろ届く頃だ。

「はーい」

 頭髪をかき混ぜつつ、軽い返事をしながら扉を開け。扉の向こうに想像したいつもの配達人のにーちゃんの顔は見えず。向けていた視線より少し下に見えたのは、女の子。しかも想像していた配達人の制服ではなく、この近所の高校の制服を着た女の子。

「あ、えっと.....隣に引っ越してきました。シロセユウキです。これ、どうぞ」

 シロセ、ユウキ。そう名乗った女の子は曖昧な微笑みと自己紹介のあと小包を手渡してきて。動揺でまともな返答も出来ず、とりあえず受け取れば重要な事実が頭を過り。


 俺今日、着替えてないし、髪も髭も何もやってねぇ。

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