Second memory 73
= second memory 73 =
田中さんはまた腕を組めと言った。嫌だよ。
私がためらうとため息をついて私の左手をとった。そしてそのまま歩く。
昔、SHINにこうして歩いてもらったことを思い出す。まだ片想いのとき。大事な思い出だから離してほしい。
〈SHELLEY〉への道は曲がらなかった。
〈Noon〉 に行くの?〈Noon〉で記念日のお祝いをするの?でも、どうしても楽しい雰囲気じゃない。
〈Noon〉に入る道も通り越す。通り越す時にちょっと店の方を見たら、店の前に何人もの人がいる。
私たちはそのまま〈Noon〉に入る道より二本奥の細い道に入った。こんな道、使ったことない。並んで歩いたら自転車とはすれ違えない細い道。
キョロキョロしていたら田中さんは一件の喫茶店に入った。でもドアにcloseの札出てるよ。
小さな古い喫茶店の奥には、藪さんのゴリがいた。その横にはカバ。
でも、カバ、お化粧してない。ジーパンにトレーナー。なに?男の人みたいだよ。
私はそのままゴリたちのいる一番奥のボックス席に向かった。田中さんはゴリに頭をさげる。
『大丈夫だったか?』
ゴリが田中さんに男言葉で聞いた。声もいつもと違うよ。藪さんのときとも違う。
『なんとか。』
田中さんは、ちらりと私の方を見てまたゴリに頭を下げた。なに?
彼はそのまま入口に一番近いカウンターに行って座った。座る前にドアに鍵をかけて。お店の人いない。closeだったものね。
『cherry、驚いたでしょ。大丈夫?』
カバの声にほっとする。いつものカバのトーン。でもどうしたの?そんなかっこのカバ、初めて見るよ。素顔も。でもSHINは?
「SHINは?」
私の質問にカバは答えずにゴリの方を見た。
『ここにはいないから。cherry、落ち着いて聞きなさい。』
ゴリの言葉にとても不安な気持ちになっていた時に、田中さんがお水を持ってきてくれた。とりあえず飲む。
「SHINはどこにいるの?今日、記念日なんだ、4回目の。」
わかる。いくら私でもわかる。
よくないことがあったんだね?SHINに。なに?
ゴリの横にいたカバが私の横に来た。男の人の格好がやっぱり不思議。そしていつものように私の手を握りしめてくれる。両手で。
『cherry、落ち着いて聞きなさい。』
ゴリは同じことをもう一度言って、小さく深呼吸をして話し出した。
『SHINは今、病院にいる。命に別状はないから。』
私は立ち上がった。
「なんで?!どこの?!行く!」
カバが私の手を強く握る。
『行けないのよ、cherry 。あなたは行ってはいけないの。』
なんで?!私はSHINの婚約者だよ?行けないの意味がわかんない!
『SHINは刺されたから。』
なに?それ!?
『誰に?!なんで?!どこで?!』
『・・SHINの部屋で。ツーに。』
ゴリの言葉に声も出ない。意味がわからない。
時計の音が聞こえる。カバは私の手をもっと強く握った。田中さんはカウンターでドアの方を見ている。
『今、SHINにはJ がついてる。さっき連絡あって、手術は無事に終わったらしい。まだ麻酔はきれてないから行っても会えない。』
目眩がしてる。頭の中で鐘がなってるみたい。手術?
『SHINの部屋にあったペティナイフで、ツーがSHINを刺した。』
私が買ったナイフ・・。
SHINの部屋にあった包丁は大きくて重たかったから。
「・・私が買ったナイフ・・」
『よかったのよ。ママが使ってた包丁だったら、今ごろ・・』
カバ、今ごろ、なに?!
なんでツーちゃんがSHINを刺すの?
だって一昨日・・。
嫌な夢の中のツーちゃんの変な笑い声を思い出す。
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