Second memory 74
= second memory 74 =
「あの写真のせい?それでSHINが怒って、ツーちゃんも怒って・・」
古い喫茶店の煙草のヤニに染まった壁を見ながら呟いた。
『違うの。cherry、あの写真はなんでもないのよ。ツーはあなたが羨ましかったから、あんなひどいイタズラをしたのよ。』
カバの言葉にやっぱりと思う。
『あの時、SHINは寝てたのよ。』
それも知ってる。じゃあなんで?
「ツーちゃんはなんでSHINの部屋に行ったの?」
ゴリがため息混じりでテーブルを見つめたまま答えた。
『オーナーのうちに行くのが嫌だってタクシーから逃げた。俺が迂闊だった。あいつが行くところなんて限られてるのに。』
そしてまた深いため息をついた。
ツーちゃん、どうして。逃げるって。
「とにかく、どこの病院なの?行く。麻酔で意識なくても覚めるの待ってるから。」
椅子から立ち上がる。カバが手を離してくれない。
『cherry、行けないの。SHINも絶対に来さすなって言ってたの。』
そんなはずない!なんで!
ゴリが立ち上がって私の肩を押さえて座らせる。
『ツーは・・・薬物を使ってた。あの部屋で。それを見つけたSHINが取り上げた。それで逆上して刺したんだ。ツーは今は警察にいる。』
胃が痛くなってくる。頭も。
なに?薬物って頭痛薬じゃないよね。
警察?どこの世界の話をしてるの、ゴリ。誰の話をしてるの?頭の中、ぐちゃぐちゃ。
『cherry、こんな話はしたくなかった。今頃、おまえたちが楽しんでるだろうってカバと笑ってたかった。でも起きてしまったんだ。』
『cherry、ごめんなさい。あんな写真撮ったことも。今度のことも。ごめんなさい。あの子は私の妹みたいなものなの。ごめんなさい。』
カバは目にいっぱい涙を溜めてる。
ゴリは両手のひらで顔を擦りながら話し出す。
『俺が甘かった。東京で行方不明になったのを探しだしたとき、あいつは合法ドラッグをやっていた。小さなキャンディみたいなドラッグでクラブで手に入るレベルのものだ。でも中毒になりかけてた。オーナーと相談して、施設に入れて依存を抜いたんだ。それで関西に連れて帰ってきた。』
それがあの日。そんなツーちゃんに私がひどいことを。ツーちゃんごめん、ごめんなさい。でも。
『戻った東京で何があったのかわからない。でもまた薬物に手を出していた。何かはわからない。でも今度は非合法だろう。SHINはコカインじゃないかと言ってた。』
コカイン・・名前は聞いたことある。
「SHINと話したの?!」
刺されたSHINと!ゴリは頷いた。
『救急車が着く前に。おまえのことも託された。cherry、あいつは傷を負った人間を山ほど見てきてる。対処方法もわかっている。だから大丈夫だから。』
刺されて大丈夫な人間なんていない!
声が出ない。カバが肩を抱いてくれる。
ゴリはテーブルの上に鞄と紙袋を置いた。
『あの部屋にあったおまえの荷物だ。確認してくれ。』
SHINの部屋にこんなにいろいろ持って行ってたっけ。とりあえず中を見る。
鞄にはCDや本、そして着替えの服がちゃんとたたんで入っている。
紙袋には、部屋着と下着や歯ブラシ、マグカップ、化粧品がぐちゃぐちゃに入っていた。
そしてその袋には赤黒いなにか、血?
SHINの血?
あわてて紙袋の中のものをさぐった。
SHINに買ってもらってから、ずっと買って使っているコンビニで売っている桜色の口紅が、真っ赤に染まっている。
SHINの血?
ぐちゃぐちゃに入っていた荷物の一番上には、SHINが好きだと言ってくれたワンピース。これも色がわからないくらい。赤じゃない、赤が重なって赤に近い黒。
こんなに血が出てたの?対処って本当にできてたの?
だいたいなんで荷物って。
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