Second memory 61

= second memory 61 =


台湾では忙しかったし、空いた時間は山根さんに紹介してもらった先生に中国語を教えてもらっていた。SHINから少し教えてもらっていたけど難しい。でも幼稚園の子供くらいには話せるようになっているらしい。

英語は結構通じる。こちらも片言だけど、ゴリとSHINに教えてもらっていたから。

ゴリからはTOEIC700取れって言われてるけどそれは無理だよ。

ツーちゃんの行方はまだわかっていない。ゴリは探しだすから心配するなって言ってくれてる。

ちゃんと謝りたい。許してくれるまで。


私が台湾に出発して5日後くらいにSHINからメールが届いた。

無事に送りとどけて明後日日本に帰るって。

私が帰るときは空港に迎えに来てくれるって。

いつもと反対。楽しみ。どんな感じがするんだろ。早く帰りたい。


飛行機に乗ってる間、わくわくしていた。SHINに会える!ほとんど3ヶ月ぶり。しかも今日は初めて私が迎えに来てもらえる。

飛行機を降りてすぐにメールを見る。

SHINから届いていた。『もう着いてる』かな?

でも違った。『ごめん、迎えに行けなくなった。帰ってすぐに申し訳ないけど来てくれるかな?』

なんだろう。ちょっとがっかりしたけど、会えるからいい。  

スーツケースをコロコロしながら、駅から歩く。もうすぐ会える。

道から部屋の前の廊下が見える場所がある。ちょうどそこを通った時にSHINの姿が見えた。ドアの前で待ってくれてるの?うれしい。

コロコロがあるから走れないけど、SHINって呼び掛けようとした時、別の人の頭が見えた。

誰?頭の位置からして女の人。後姿だからわからないけどショートカット。

SHINはその人と話してるみたい。近所の人かな。

立ち止まって道から二人を見ていたら、その人がいきなりSHINの胸にすがった。誰?

SHINもその人の背中に手を回してる。誰?

その胸にすがっていいのは私だけのはず。

ずっと待ってたのは私。

私がそうしたかったの。ずっと。

私が見ていることも知らず、二人はそのまま部屋に入った。SHINが彼女の肩を抱くようにして。

呆然としていた。今見たのはなんだったんだろう。クラクションを鳴らされてやっと我にかえる。道の端に寄ったけど動けない。自転車に牽かれそうになる。ただ右足と左足を交互に出した。

マンションの入口を通り過ぎて公園へ。ベンチに座る。

私は何を見たんだろう。さっきから脳が止まっている。

帰ったらすぐに迎えに来てくれたSHINの胸に飛び込んで、廻りの目なんか気にせずに彼にkissしようと思ってた。

二人でSHINの部屋に帰って、愛し合って、私はSHINに自分の気持ちを伝えようと思っていた。

私が何が嫌なのかをちゃんと。

そしてモンゴルの草原の夜空の写真を、いっぱい見せてもらおうと。

どのくらいそこにいただろう。携帯が鳴った。SHINから。

『cherry、ごめんね、今どこ?来れる?』

行っていいの?

『ちょっと部屋を出れないから。』

なんだかよくわからないよ。でも、来てって言ってる。

「もう、着く。」

私、SHINが一人じゃないって知ってるよ。SHINはほっとしたみたいに言った。

『ありがと。インターフォン鳴らして入ってきて。』

なんで?お客さんみたいに入っていくの?

電話を切ってからも少しの間ベンチを立てなかった。でも来てって言ってる。

のろのろと立ち上がって、マンションの入口に向かう。

エレベーターに乗って、廊下を歩いて部屋の前に。

深呼吸を一回して、ちょっと震える指でインターフォンを押した。

戦うの私?誰か知らないその女性と。

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