Second memory 58
= second memory 58 =
今回のことをゴリに報告と相談がしたくて、〈SHELLEY〉に電話をかけたけど、ゴリはいなかった。
『しばらく店にはこない』
とカバが言ってた。カバにも話した。
カバはどんな顔して怒ってるかが手に取るようにわかるほど怒ってくれた。ちょっと力が抜ける。
きっと目の前にいたら抱き締めて頭を撫でてくれただろう。〈SHELLEY〉に行きたい。
カバにはSHINのことも少し話した。こっちも憤慨してくれる。カバがSHINのことを怒れば、少し寛大になれる私。
『でもcherryもわかったような素振り見せたんでしょ?また強がって。』
確かに応援するみたいなことを言ったけど、あれは本心だもん。強がりじゃないよ。
『男はバカか、ズルいのよ。強がってみせたら、ほんとに強くなったと思うか、それを利用してわがまま通すか。SHINはバカの方ね!』
って。
その時ふと思った。今回、SHINが遊牧民の人を追いかけるのは仕方がないからじゃない。記者の人に頼まれて断れなかったというのでもない。彼は行きたいと、撮りたいと思ったに違いない。
そして改めて気づく。彼はジャーナリストなんだ。今更だけど。
受話器の向こうでプリプリ怒ってくれているカバの言葉が、聞き取れなくなってくる。
電話を切ったあとに、SHINの送ってくれた青空の写真を見ていた。
今ごろどうしてるのかな?
そんなに時差はないよね。もう眠ってる?
満天の星の下で。生まれて初めての風景に子供みたいに感動しながら。
そんな想像しかできない。
私は何が嫌なんだろう。
命の危険があるわけではない。今の状況を楽しんでいる笑顔の彼しか想像できない。
彼が幸せなら、楽しいならいいはず。でも嫌だと思ってるよね。
考えていて思った。多分、連絡がとれなくなることかもしれない。
メールでも電話でも、何かで繋がっていることを私は求めているのかもしれない。
ウランバートルにいると思ってた時は、こんな風に嫌な気持ちにはなってないし。
もちろん、私の方に問題が起こったからっていうのもあるけど。
そんなことをぼんやり考えながら、それをSHINにちゃんと伝えればいいのかもしれないと思えた。
ただ怖いとか、漠然とした不安とかそういうのって言われてもSHINもどうしようもないけど、具体的に伝えることができればそこはキープしてくれるかもしれない。
窓を開けて夜空を見上げる。
星と月が出ている。
SHINがこの子たちを見るのは何時間後だろう。おそらくもっともっとたくさんの星。
そんな夜空でも月は輝いているのかな?
結局、クライアントに謝罪に行った営業部長は、届けに行った若い社員のせいにしたらしい。そこに落とすのが一番無難だったんだろう。ゴリもそう言っていた。
『結局、その営業に担当させたのはそいつの上司だからね。火の粉が一番ましなとこってなるとそうなるわね。』
って。
A社が信頼を無くしたくなかったのは、例の会社の親会社からのものだったんだって、後で真鍋さんが教えてくれた。
部長からはしばらく台湾の仕事に専念するようにという指示と共に、来週から2~3週間の台湾出張を命じられた。
今回の一件が関係しているのかどうかはわからないけれど、あちらでやらなければいけないことはたくさんあるし、山根さんもいらっしゃるから。
その間にSHINが帰っていてほしい。
モンゴルの、草原の、満天の星空の中でも、
耀く月の写真を持って。
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