Second memory 51
= second memory 51 =
年賀状の中に、『結婚しました』って報告が時々入ってくるようになった。短大の時に私に彼氏がいることを、すごく羨ましがっていた女友達からきたハガキにも、幸せそうなウェディングドレス姿が写っている。
チュニジアから帰ってきてSHINはやっぱり離れることはできないって言ってくれた。あっちでお兄ちゃんの言葉を何度も考えていたらしい。私と別れることも勝手に想像していたみたい。
『半身をもがれる思いがした。』って言ってくれた。勝手に考えないでよ。それは私も同じ。
でも『cherryの結婚はすべての人に祝福されなければいけないんだ。』って。だからお兄ちゃんや私の家族が認めてくれるまで努力するって。そんな彼の気持ちはとても嬉しいけれど。
SHINがチュニジアに行っている間にお兄ちゃんと話した。お兄ちゃんは聞く耳を持たない。男と女は違うって昭和みたいなことを言う。
『惚れた女守れん男は認めん。』
の一点張りだった。頑固なのは知ってたけど、ここまでわからずやだとは思わなかったよ。
「誰だってわからないやん。そんなん言うてるお兄ちゃんが交通事故で先に死ぬかもしれんやん!」
そう言ったら、
『死ぬことやなくて、行くことが問題なんや。連絡もとれんとこにな。それがあかんとは言わん。立派な仕事や。でも俺は俺の代わりにお前を守れんやつは認めん。』
と返された。
「私を守るってどういうことだよ。そんなSP みたいなこと誰にもできないよ。」
支離滅裂になっていく私。
『なあ、考えてみろ。あいつはあの仕事辞めるんか?結婚して子供できたら。結婚ってなったらお前だけやないやろ。お前一人守れんやつに家族守れるんか?お前が一人で子供のこと守るんか?』
私は・・守れなかった。
SHINはいつまで行くんだろう。子供がいても行くのかな?そんなことを考えてしまった時点で私の負け。仕切りなおしだ。
お母さんも『賛成できない』って言った。
『あなたはそんなに強くない。』って。
「じゃあ、私が強くなればいいんだよね?お母さんはそうしたら認めてくれるんだよね?」
私のそんな言葉に、
『強くなるってそんなに簡単じゃないのよ。』
って言われた。そんなのわかってる。仕切りなおし。
カバはいつも何でも話し合えって言うのに『あなたが忘れた方がいいこともある。』って言った。体がそこまで拒否反応を示すなら、それはお互いにとって忘れた方がいいことなのかもしれないって。
忘れることなんかできない。気づいてもあげなかった上に忘れるなんて。でもSHINにまで辛い思いをさせることもないのかもしれない。
SHINの過去のことを考えてしまった。それは影響しないのだろうかって。だからまだ伝えられずにいる。私の中でだけ、大切にあの子のことを思った方がいいのかもしれないと思いだしていた。
夏にSHINはまたアフガニスタンに行った。今度は3ヶ月。新しい政府の元、昔の姿を取り戻そうとする人たちに会いに行った。
その時も戦闘地域ではないので私は乱れなかった。国名で怖い思いは甦ったし、あの時、自分を取り巻いた事々は鮮明に思い出したけれど。ほんの少しでも強くなれていたのならいいのだけど。
帰ってからは、ようやく〈Noon 〉に復帰して土曜日だけ歌っている。
私の仕事も忙しかった。X'masをまたいで佐々田部長のお供で台湾に行っていた。
だから去年はSHINの(Happy X'mas)を聴けていない。彼は特別って部屋で歌ってくれた。独り占めは嬉しいけど。やっぱり〈Noon〉で聴きたかった。
去年はすれ違いばかりだったような気がする。
でもSHINの仕事と私の仕事の時間をぬって、クロスする二人の時間はとても静かで穏やかだった。
パステルで彩られたような何気ない時間が私は好きだ。本当はそんな時間がもっともっとほしいけれど。
SHINが1年の3分の1 日本にいないなら、残りの3分の2はずっと一緒にいたい。
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