Second memory 30
= second memory 30 =
カバのお粥を温めて食べた。お風呂をはりなおして入った。メールをチェックする。SHIN から届いていた。
『バンコクついたよ』
「気をつけて!DVD 見たよ。私は大丈夫!ちゃんと待ってる。」
写真を送ろうかと思ったけど、眼が腫れてるからやめた。
Rudrakshaは、約束どうりくまのSHINにかけた。どうぞ人間のSHINが危険な目にあいませんように。守ってください。
祈ったあとで思う。おそらくSHINもわかっていたんだろう。ゴリが空港に来た時点で。
ちゃんとベッドで眠った。
朝御飯にシリアルを食べて、掃除をして、洗濯物を干して、SHINの部屋に行く。
SHINのパジャマとシーツをもう一度しっかり抱きしめてから、洗濯機を回してベランダに干す。
シーツを干した時にSHINがくれたピアスに触れる。これは私の癖になる。
昨日、ゴリが乱暴にぶちまけて水で流しただけになっているシンクを洗って、お風呂の掃除をした。それから部屋の掃除。残っていたお米を袋に入れて鞄にいれた。SHINが帰ってくるまでこの部屋で食事は作らない。
洗濯物が乾くまで、SHINのDVDを観る。このDVDは2ヶ月間この部屋でしか見ない。どちらも自分で決めたこと。
このDVDを観てもう泣かない。SHINの想いを幸せに受けとめる。抱きしめていく。
明日から仕事も再開。私はきちんと日常に戻るんだ。SHINが頑張ってるのと同じだけ、私なりに頑張りながら待つんだ。stayではなく、前進しながら。
DVDを2回観て、ピアノに向かう。SHINが帰ってくるまでに(time after time)の弾きがたりができるように練習する。それが新しい目標。
〈SHELLEY〉に行くとゴリが気まずそうな顔をした。今日はゴリしかいない。
『騙して悪かったわよ。』
って。違うよ、ゴリ。ありがとうだよ。ほんとに。
「心配かけてごめんね。ゴリのおかげでいってらっしゃいってちゃんと言えたよ。ありがとう。」
ゴリを見て笑った。もう大丈夫って伝えたかった。ゴリはちょっとため息をついて話しだした。
『心配しまくってたのはカバよ。あんたがSHINの出発を知った日からずっと。絶対、無理しまくるだろうって。心を抑え込んで頑張るだろうって。それが一番ダメなんだってさ。
そんな状態のまま離れたら、神経が張りつめていた分、喪失感をコントロールできないって。
あんたにとって、おそらく初めての喪失感がでかすぎるってね。あいつはほとんど母性であんたのこと見てるみたいだからねぇ。カバにお礼言っときなさいよ。』
頷いた。昨日みたいにはならないとしても、きっとまた泣きたくなる。淋しくなる。そんなときは甘えさせてね。泣かせてね。
カバが帰ってきた。カバにもお礼を言った。
『もう普通のもの食べれる?』
頷くと、カバは少し笑った。
『natural cherryに戻れてるわね。』
natural cherryっていう言葉に、ちょっと心臓がチクっとした。
DVDの中のSHINを思い出す。脳が止まった状態で観ていたはずなのに、1コマ1コマのSHINの表情も、内容も全部覚えている。目を閉じればすぐ前にSHINの笑顔がある。大丈夫。
カバの作ってくれた遅いランチを食べているときに、ゴリの携帯にメールがきた。
『アフガンに入ったって。』
心臓をぎゅっと捕まれたタイミングに、カバが手を握ってくれた。大丈夫。
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