Second memory 2
= second memory 2 =
2月の終わりに、SHINがうれしそうに帰ってきた。
『cherry!部屋が見つかったー!』
って。うそー?あの条件クリアしたんだ。
オーナーの紹介だから不動産屋さんが頑張ってくれたらしい。頑張らなくていいのに。
家賃もそんなに高くないって、SHINは物件の間取り図を見ながら、いろいろ説明してくれてる。
でも、なんでそんなうれしそうなのさ。泣きたくなってくる。まるで私の部屋が見つかって、自分が心置きなく行けることを喜んでるみたいに見えるじゃない。そうじゃないのはわかっているけど。
一生懸命探してたものが見つかって、単純にうれしいんでしょ?男の人って子供でバカだ。背景、忘れてるよね?
私の様子がおかしいことに気づいて、ようやく自分のばかさ加減に気づいたみたいだね。
『ごめん。でも見つかったから。あの条件で。』
って。ちょっとあきれてしまったよ。
「・・いつ行くの?」
って聞いたら、まだ何も決まってないって。
『cherryの誕生日までは絶対いるし。』
って・・・。
あぁ!そうだ!!
「SHIN!SHINのお誕生日っていつ?」
忘れてた、聞くの。まさかこの9ヶ月の間に過ぎてないよね?
SHINは私のいきなりの質問にちょっと黙ってから、私から目をそらして小さい声で言った。
『・・3月3日。』
「お雛様じゃない!」
『ほら、そう言うだろ。みんなそう言うから、言いたくないんだよね。』
って、ちょっとスネたみたいに言う。かわいい。でもすぐじゃない!
「お祝いしなきゃ!二人でお祝いしようね。」
私の機嫌が直ったことにホッとしてるの丸見えで、彼はちょっと笑った。
「女の子が産まれたら、(雛)って名前にしようか?」
SHINは頭の中に出てきたことを、そのまま口にしちゃった私の鼻をつまんで
『そういう風に言うだろ?だから誕生日言いたくないんだよ。』
って笑った。でも雛ちゃんってかわいいじゃない。
結婚の約束なんかしてないけど。そんな日がくるのはずっと先だけど、雛ちゃんがいいな。私はその日がくることを疑わない。
SHINはもうすぐ私より六つ年上になる。
3月、曇り空。
二人で私の部屋を見に行く。
SHINのマンションから歩いて7分。駅まで歩いて10分。近くのコンビニまでは2分くらい。コンビニの隣にコインランドリー。入り口はオートロック。そんなマンションの5階。
SHINちのメインの部屋の四分の一くらいの広さのワンルーム。一口コンロのキッチンとユニットバス。一人暮らしの部屋ってこんなんなんだ。その狭さに少し驚いた。でも窓から見える景色は好き。
不動産屋さんは、すごいラッキーだったと話していた。ここに住んでいた女性の結婚が急に決まって、彼女は相手のもとに行ったらしい。彼の転勤がきっかけになったって。SHINは
『なんか過去にあったりしませんよね?』
って言って、両隣がどんな人か聞いた。OLさんと美容師さんだって。
『もちろん女性ですよね?』
って。だからそこはさぁ。
不動産屋さんは、もちろん!と答える。多分、両方の質問の答。ベランダに出ていた私が
「ここにします。」
と言うと、不動産さんはとてもホッとした顔で、
『ありがとうございます!』
と頭をさげてくれた。
こちらこそだよ。よくぞまあ、あの条件を。
ベランダの鍵を閉めながら思う。
ここで待つんだ。
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