First memory 79
= memory 79 =
水曜日。夏休み前までに出さなければいけなかった進路調査票をまだ提出していなかった私は、昼休みに学生課に呼ばれた。
でも、もう書いてる。これを提出する。
お父さんとお母さんにはもう言ってある。
お父さんは反対したけど、お母さんはわかったと言ってくれた。お父さんの条件は、今、あげているいくつかの会社がだめだったら、一般編入試験を受けるか、専門学校に行くこと。もちろん異存はない。
調査票の<就職>欄に丸をつけている。
横棒にチェックする活動経緯は無記入。
進路相談窓口の先生は、ため息をついた。
『何も活動していないのに、今から就職って無理よ。そんなに甘くないわよ。』
甘いなんて思ってないよ。でも今働きたい。
学校で勉強しているだけじゃなくて、反応を感じられる場所に行きたい。それが私の出した結論。もちろん(Crazy Night)があったからこそ。
「就職がだめだったらコンピュータの専門学校に行きます。」
そう言うと判子を押して受け取ってくれた。
この話を一番最初に伝えたい相手は、やっぱりゴリ。
導いてくれたのはやっぱりあの二人で、引っ張ってくれて助けてくれた先生はゴリだから。学校の先生よりももっと濃い何かを教えてもらった気がする。
無謀なことを言ってるのは百も承知。
だってもう10月。内定出てる時期だもん。
でも諦めたくない。今、心の中でふつふつしてるもの、大事にしたい。
今しかできないことをやってみたい。
ゴリは、ちょっと笑った。
『できる限りの応援をするわ。がんばってみなさい。』
って。はい、先生。
『cherry 、今、心の中でふつふつしてるって言ったでしょ。多分、それが"夢"の種なんじゃないの?』
それは、私が初めてゴリにした質問の答?
アンケートの集計をしている途中でゴリがどっか行ったから、一人で1枚1枚読みながら分けていく。
全体から見た数字。
〈SHELLEY 〉から見た数字。
〈Noon 〉から見た数字。
ゴリに言われたように同じアンケートをいろんな角度から見ながら数字にしていく。
田中さんが言ったように概ね好評みたい。
と、1枚のピンクのアンケートの裏に何かが書いてあるのを見つけた。
そこには3つ目の更衣室のことが書いてあった。
(あの更衣室を見た時に嬉しくて涙が出ました。
仮装はしたかったけど男子更衣室で着替えるのは絶対に嫌だったし、女子更衣室には入れてもらえないから、諦めかけてたけど、チラシで〈New gender用〉って言葉を見つけて勇気出してドレスを借りました。
そしたらほんとにそんな部屋があったから、着替えながら泣いちゃった。ありがとー!
SHELLEY の人たちは、みんなきれいで、特に緑の髪の人はきれいでかわいくて、とても楽しそうで。私、生きてていいんだって思った。
ずっと着たかったプリンセスのドレス着て、何回もSHELLEY とNoon を行ったり来たりしちゃった。
あの更衣室でおんなじことで悩んでた友達もできたよ。明日からまた男子の格好でがんばれる!
ツラくなったら"SHELLEY BOMB!"って叫びながら。そしていつか、緑の人みたいにキラキラ生きて行ける場所を見つけるね!ありがとー!)
こっちがありがとーだよ。私が泣いちゃうよ。
厨房にいるカバに飛んで行って見せた。
『よかったわねぇ。』
って、頭を撫でてくれた。
ゴリが帰ってきたから、ゴリにも見せに行く。
ゴリも頭を撫でてくれた。
『cherry に負けちゃったわね。』
って。でも嬉しそうに言ってくれた。そして
『cherry 、次の日曜、紀伊国屋の前に2時に来なさい。普通の格好でいいけどちょっときちんとして。ほら、あの無駄なショートブーツ履く感じの服装で。』
って。特に予定はないけど、服装指定まであるの?
ゴリは、ちょっとニヤッて笑って
『人、多いけど私を見つけるのよ!』
って。人、多くても120%見つけられるよ。
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