First memory 69
= memory 69 =
パソコンで作った企画書を見たゴリは、ちょっと誉めてくれた。サムネイルも真剣に見てくれてるからうれしい。
でも・・聞きたいことがある。
『どうかした?』
また!なんでわかるんだ?ゴリの言葉にパクパクしてしまった。でもどう聞けばいいのかわからない。SHIN のケガのこと。
昨日SHINは『たいしたことじゃない。』って、仰向けになって寝てしまった。腕枕をしてくれて。
朝、起きたときは聞けなかった。
時間もなかったし。
『で、SHINにいくら払うの?ツーには?』
ゴリ、はずれだ!初めてはずれだ。
でも何?お金のこと?
『きょとんとしないでよ。SHINはプロよ。ツーもね。うちの子たちもただでモデルなんてさせないわよ。それともリアルっぽいイラストを描くの?』
ギャラのこと?そんなお金ない。
イラストも描けない。
泣きそうになっていたらカバがいつもみたいに助け船を出してくれる。
『SHINはお金なんて取らないわよ、cherryから。ツーもね。』
でもゴリは怖い顔だった。ほんとに泣くかも。
『カバ、甘スギ。cherry 、現実を知りなさい。ちゃんと。』
『学生のcherryにそんなお金出せないわよ。』
めずらしくカバがゴリに強く言った。ケンカしないでね。
ゴリはフッーてため息をついた。
『・・チケット売ればいいのよ。』
私の頭のなかの誰に売るんだよ!
『オーナーにも、ママにも話通してあるから。SHELLEYの15周年イベント、これで行くわよ。あんたの取り分はなしでいいわよね?』
どういうこと?
カバもポカンとしたけど、すぐにゴリに抱きついた。
『やっぱり先輩ダイスキだわ!さすがだわ~!』
ゴリは
『あ~もう、うっとおしい。』
って言ってカバを離した。なんのこと?
カバが叫ぶみたいに言う。
『cherry!リアルになるのよ!あなたの頭の中のことが!』
よくわからないけど、
なんでかわからないけど、
マスカレード〈crazy night〉がリアルになる。
私の企画書は、ゴリからいっぱい赤入れをされて返ってきた。書き直せって。
サムネイルからは3つが選ばれてラフを作れって。つまり、取引先の担当者が先生。
それなら、こう変えてって言えばいいのにそうは言わない。
私がやりたいこと、思ってることをベースにそれをどう伝えるかのヒントをくれる。
そしてその担当者がお金のことも考えて教えてくれる。
でも、言われたまんまで持っていったら違うって言われる。
〈SHELLEY 〉の15周年は9月30日土曜日。
遅くても告知は8月末。
私の夏休みがなくなることが決定。
SHINはお金いらないって言ったけど、ゴリがプロの仕事を求めてるんだって譲らなかった。
ツーちゃんはモデル代を聞いたけど、自分の店だからって却下されてた。
私はツール制作よりもお金の計算や、お客さんの更衣室の確保やレンタル衣装屋さんとの交渉にたくさんの時間を使った。
写真のことはSHINに任せたし、スタッフの衣装のことはツーちゃんに任せた。
当日のケイタリングはメニューも含めてカバに任せた。
ツーちゃんにはモデル代は出さないけど、スタイリスト代を払うって言ったら、ゴリは何も言わなかった。
もちろん〈Noon〉でのバイトは続いている。
最近はMCもできるようになったし、持ち歌も30曲を越えた。
今日は山根さんが聴きに来てくれた。
(夜来香)のおじさん。初めてファンレターをくれた人。
ステージが終わってからテーブルに行った。もう何回か話している。
山根さんに〈SHELLEY〉 の15周年のことを話した。ぜひ来たいって刷り上がったばかりのチケット買ってくれた。
最初にチケットを買ってくれたのも山根さんになったよ。
チケットにはリクエストカードがついていて、切り離して〈SHELLEY 〉と〈Noon 〉にあるボックスに入れてもらう。抽選になるけど。
『リクエストはもちろん、(夜来香)で。』
って笑ってくれた。
考えてみたら、あれから一度もSHINとデュエットしてないなあ。部屋でピアノで歌って遊んだりはするけど。
リクエストカードには、お客さんが歌うの希望するときは丸つけるようにしてある。
抽選で当たった人がステージで歌える。
「山根さんも一緒に歌いましょうよ。ここに丸つけてください。抽選になるけど。」
山根さんは無理無理って言ってたけど、奥様も聞きたいかもって言ったら、照れながら丸をつけてボックスに入れてくれた。
そうだ!私もリクエストカードだそう。
SHINとのデュエット希望で!本名で出したらいいよね。リクエストカードはチケットについてるから、チケット買わなきゃ。
当たりますように。
曲は何にしようかなあ。
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