First memory 42

= memory 42 =


ソファに横になっていたら、SHINさんがブランケットをかけてくれた。でも息が苦しい。

ビニール袋とお水を持ってきて

『過呼吸にならないように、この袋の中に息を吐いて。』

と教えてくれる。

言われるままにしていたら、少し楽になったから座りなおした。

怖かった。本当に怖かった。掌を見たらまだ震えている。握ることができない。あぁ、でもSHINさんに御礼言わなきゃ。そう思って口を開こうとしてもちゃんと言葉が出ない。

「シ・・あ ありがとうご・・」

途中まで言ったら、もういいからと肩を抱いてくれた。あったかい。

『よく頑張ったね。すごかったよ。ほんとにすごかったよ。』

SHINさんはそう言いながら、ブランケットを掛けなおして肩から腕をさすってくれている。

『あんなことほとんどないから。僕も数回しか知らない。それが今日来るなんて!』

怒ってくれてるんですね?神様を。

ありがとうございます。ちゃんと声に出してお礼が言いたいのに。まだガタガタしてる。

少し水を飲んだ。ドアがノックされた。

Jさんが入ってくる。

『cherry、大丈夫か?怖かったやろ?よう頑張ったなあ。あいつは田中くんに追い出してもらうからな。』

Jさんも怒っている。でもちょっと待って。

「Jさ・ん、待って。・・あの人、拍手・・くれた。泣いて・・た。こわ・かたけど、泣い・・た・」

そうだよ、襲ってきたわけじゃない。

私にリクエストをくれようとしただけ。私の歌に拍手くれた。泣いてた。きっと悪い人じゃない。

Jさんも、SHINさんもちょっと驚いた顔をしていた。私もびっくりするよ。

だって私、泣いてる。あの人のためじゃきっとないけど。

なんか、いろんなことあわさって涙がでてきた。

「・ご・・ごめん・・なさい・・」

まだ震えは止まらない。涙も。

『わかったcherry・・・いいから、謝らなくていいから、泣かなくていいから。』

SHINさんが、そう言うと肩を抱く手に力をこめてくれる。

『まだ帰ってないからな・・とりあえず、もうちょっと休んで、あかんかったら、今日は終わりにしよ。cherryはほんまによう頑張ったで。SHINもありがとうな。助かった。』

Jさんはそう言うと部屋から出ていった。

『・・cherryちゃんはなんも謝ることないやん。自分のステージ、完璧にこなして。素晴らしかったよ。そのうえあのアクシデント乗り越えたやん。デビューのステージでだよ!まちがいなく〈Noon〉の伝説になるよ!』

SHINさんの大げさなものいいにちょっとおかしくなる。震えもだいぶ落ちついてる。

ドアがノックされて、またJさんがのぞいた。

『SHIN、ちょっとええか?』

ちょっと落ち着いてきてる。大丈夫。

SHINさんに大丈夫ですと頷いて見せた。

SHINさんはこちらを振り返り振り返りドアの方に行った。

ドアを少し開けてJ さんと話してるみたい。

少しして戻ってきた。

『cherryちゃん、第2ステージは僕が出るから。久しぶりにJ とツインピアノで遊んでくるね。だから、無理しないで。落ち着いたら聴きにおいでね。』

SHINさんはそう言うと、また私の隣に座ってくれた。そして

『でも、ほんとにすごかったよ。(allelujah)感動した!それにデュエットできたね。初めてなのに、初めてとは思えなかったよ。気持ちよかったぁ。』

そう言って笑ってくれた。

うれしい。

SHINさん、私も気持ちよかったです。

だからちょっとだけ、ちょっとだけ、あのオジサンと神様に感謝します。

ちょっとだけだけど。

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