第21話 幕間 二人の少女

 少女はとことこと、学校を目指して歩く。いつもの制服、いつもの鞄を手に持ち坂道を下るが、一つだけ普段とは違う所があった。


 無表情で代わり映えしないその面持ちが、嬉しそうに微笑んでいた。他の人のそれに比べると変化が少なく、本人すらもそのことを自覚していなかった。


 少女は思い出す、昨日のことを。


 ――顔も性格もブスな女ほど、救いようのない奴っていないよな――


 少女に汚い言葉を投げかけた女生徒達に向かって放たれたその言葉は、彼の表情と共に少女の中にはっきりと記憶されている。


 機嫌良く登校する少女の頬を、さらりと風が撫でた。梅雨の時期だが今日は太陽が顔を覗かせ、空はその青さを主張している。


 昨日今日と晴れたが、また明日からは雨になると天気予報は告げていた。


「みう、待ってよ!」


 少女の後ろから、大きな声をかけてくるのは親しい友人の姿だ。


「あやが遅かったから」


 すっと振り返り、少女は親友の呼びかけに答える。


 その時にはもう、少女の表情はいつもの様子に戻っていた。


「……みう、良いことあった?」

「どうして」

「そんぐらい分かるもん」

「…………」

「図星だー」

「あや、うるさい」


 少女は親友との心地よい一時に、優しく身を委ねた。木の葉から漏れた光が、二人を照らす。

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