シェアワールド ~死神の初恋~
遊び心
シェアワールド ~死神の初恋~ 133,739文字
死神の初恋
第1話 死神の初恋①
二度と人は愛さない。
死神と
※
そもそも。
ハクロは人の愛し方を知らない。生まれて間もなく捨てられ、両親のぬくもりさえ知らずに育ったからだ。
記憶は生まれた瞬間まで
その望まれなかった子はすぐに別の場所へ移され、独りになった。
女の泣き声を残して、独りになった。
独り置き去りにされた場所は、誰にも
忌み子としてもって生まれた
――俺は
言葉は知らずとも、そう自覚していた。
だが、無条件に
幼いながらもハクロは必死に知恵をめぐらせた。人間の武器は
与えられないのであれば奪わなくては。
生きるためには殺さなくては。
時折現れる墓荒らしはみんなそうしている。見つからないようにハクロは、
――これでは獣と変わらない。理性ある人間のすることか。
そう思った。
思ったが、しかし――
渇いた
※
やがて。
だが真っ向勝負を挑む必要はない。一戦ごとが生死に直結するのだ。身の安全を最優先に、なるべく獲物からはなれて戦える状況が望ましい。しかし弓を引く技術はない。矢が尽きることにも不安を感じる。
得物が決まるとハクロは、墓穴から出て攻勢にうってでた。
隠れて逃げ回るのはおしまいだ。初めにハクロは死肉を
成功と失敗を繰り返しながら次第に火の扱いにも慣れたし、人知れず
だが、まだ
時には返り討ちにもあったが、それは己の力量を見誤ったからに他ならない。必要以上に欲しなければ自然はハクロを生かしてくれる。怪我をして動けなくなった時も、薬草が手の届くところに生えていた。奇跡の意味も知らぬまま思わず
ハクロは独りであっても孤独ではなかった。
不思議な
だが野に下ることだけは未だ
獣は、こちらから
だが人間は違う。
真に警戒するべきは人間だ。
彼らは
墓場もそのひとつである。
決して
それなのに。
幾度も此処で人間同士が討ち合うのを見てきた。いがみ合い、無駄な
成長し、さらに力をつけたハクロは次第に人間を追い払うようになった。
何度も、何度でも追い払った。
繰り返すうちにハクロは
それでも、いくら強くなろうともハクロは、むやみな
食べもしないのに命を奪うことは
――俺ならもっと理性ある対応ができる。
本来ならば
しかし成果は一向にあがらなかった。
人の群れは減るどころか日を追うごとに増していく。いったいこんな日陰の地にどれほどの
――墓場には死神が棲んでいる。
と。
過去に追い払った者たちの誰かがそんな噂を流したようだ。
顔も
気づけば名をあげたい戦士がこぞって集まるようになっていた。いずれもハクロの敵ではなかったが、しかし連戦の疲労は否めない。ある日、一瞬の油断を突かれて塒を埋められてしまった。
「俺は死神なんかじゃない!」
「黙って去れば追いかけたりしない!」
何度もそう云って
死神と
まるで言葉が通じない。
同じ人間なのに――言葉が通じない。
たしかにハクロは
聴く者が誰一人いなくとも、そう叫び続けた。
※
それから。
ハクロは、敵襲を
塒を追われてから数日が経ち、ついに水も食料も尽きてしまった。
――どうして俺がこんな目に
――俺が忌み子だからか?
否、彼らにしてみれば死神なのか。
まったくの云いがかりである。
ハクロは、墓に棲んではいても人を
人間だ。
いくら
明るい。
無数に揺れる松明の灯りが暴力的なほどに眼に
理解を超えた存在を放っておけないのだろう。死神などこの世には存在しないのだ。無いはずのものが在ってはいけないのだ。だがハクロはたしかに存在している。ならば名前を――
在るならば名前を名乗れと云う。
無いならば死神だと決めつける。
無いものが在ると不安なのだろう。だから闇を照らし、正体を暴こうというのか。それでも解らないから勝手に名付けて安心しようというのか。
無いものは無い。
知らないものは知らない。ならばハクロは、
――在ってはいけない存在なのか?
そう思った瞬間、
どろり――
と黒い影が
視えてはいけないものが視え、そして――
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