186.Sな彼女とNな彼

青い空。



絵の具で描いたみたいな薄い白い雲。



初夏の陽気。





潮風が強くてスカートがひらめく。




「実結、パンツ見えそうやで」




「バカッ!」




言われた瞬間に近くの人がチラッと私を見た。



咄嗟に砂を蹴り上げる。




「うわっ! 砂かけんな」




「海水じゃないだけ有難いでしょ?!」




全く相変わらずなんだから。





潮干狩りに来ている家族連れの間を



縫うように波打ち際を歩く。





プロポーズを断った夜


二人で寝転んでじゃれ合ってた場所は


この辺り。




立ち止まって紀樹の手を引く。




「紀樹、キスして?」




「はあ?」




「前はココでしたじゃん」




少しの間が空く。



紀樹もどうやら思い出してくれた。




「あれは夜やんか(笑)。真っ昼間から何を考えてんねん……っ!」




少し背伸びして唇を奪う。




「隙あり♡どうせ誰も見てないよ」




「あのなー……」





本物の猫になれそうと思った夜。



一生可愛がってくれると言った紀樹に



飼われて生きていけるのなら



今すぐ猫に生まれ変わりたい。





そばの公園でベンチに座る。




一睡も出来ずに朝早くから作ったお弁当を


二人で食べた。



やっぱり料理は苦手だから


次は料理上手で家庭的な人だといいな。




食べ終えてシロツメクサで花冠を作った。




頭に乗せてゴソゴソと地面を這う。




「何やってんの?」




「四葉のクローバーないかなって思って」




紀樹の幸運を祈りたい。




「そう簡単には見つからんやろ(笑)」




「紀樹も探してよ~」




「休憩してからな♪」




「探す気ないよね」




沢山のクローバーをかき分ける。





紀樹に早くいい人が見つかるようにと



願いながら探す。





嘘の混じった願いを



叶えるための四葉のクローバーは



一人では見つけられなかった。










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