165.Sな彼女とNな彼

ハロウィンが終わると


クリスマスに向けて動き始める。


そろそろコンペに向けての準備も


始めないといけない。




変わらない日常。





それが変わり始めた。





「間宮さん、ちょっと」




社長から呼び出された。




また転勤だったら嫌だな、と思いながら


社長室へ入る。




「間宮さんは独身だよね」



うわ、来た。



「はい」




大阪に戻れかな。



今回は紀樹が来るわけないから


嫌だなあ。




「お見合いどうかな」



「はい……えっ?」



お見合い?!



「知人の息子さんがね、間宮さんと是非ってね」



「わ、私そんなお見合い申し込まれるようなアレではないです」



突然の打診に動揺した。



「イベント会場で働きぶりが素敵だったと聞いてるよ」



「いやいや……」




写真と釣書つりしょが差し出された。




こ、これは、悟さん……?!




「海崎病院って知らない?そこの三男で間宮さんよりは年下なんだけど、年上が良いんだって」



「知りません……」



「隣の県の大きい病院だよ。この子は違う病院で研修医をしてる」



それは知ってます、とは言えない。



「申し訳ないですが、私には不相応かと思います」



「息子さんは一般家庭のお嬢さんを希望されてるから心配いらないよ」



存じております。



そんな心配はしていない。



「すみませんが……」



「私の顔を立てると思って会うだけでも。ねっ?」



社長のお願いを断れる社員など


我が社には存在しない。



「わかりました」




写真は好青年に見える。


軽いパーマの掛かったマッシュボブが


爽やかな雰囲気を醸し出している。




釣書はいわゆる自己紹介で


華々しい経歴と趣味は城巡り……は


意外と言えば意外かな。



婿養子も可と書かれていると


姉妹二人の私にとっては好条件……。




っていやいや、何考えてんの(笑)。




課長がニヤニヤしながら


私が席に戻るのを待っていた。




「間宮さん、お見合い受けたんだ」



「会うだけです。ご本人にお断りします」



「病院の御曹司でしょ?玉の輿だね」



「三男ですよ」



「気楽でいいじゃない」



「あ、絶対に誰にも言わないでくださいね」



「秋山さんには言っちゃった。てへ」



「もう!」




園子にも口止めをして


悟さんとのお見合いの日取りを決めた。


私の釣書も提出せざるを得ない。





数日後にはホテルのラウンジで


二人きりで会う約束になった。





「こんにちは、実結ちゃん」



「どういうつもりですか?」



「そんな怒んないでよ(笑)」




ふかふかのソファに向かい合わせに座る。




「彼氏がいますって言いましたよね」



「俺とデートしてから考えても良くない?」



「考えるつもりないです」



「まあまあ、にゃこランド行かない?」



「何でテーマパーク……」



「ハロウィンの最終日だよ。バルコニーのプレミアムシート付き」




ハロウィン限定のキャラパレード。


見たい。


普通はバルコニー席なんて


お金出しても入れない。




「えっ……と」




「キャラ作る勉強になると思うけど?」




行きたい。



でも、これは行くとまずい。




「……行きません」




「このチケット、実結ちゃんとこの社長が手配したって言っても?」




「それはずるくないですか」




「社会勉強だよ(笑)。パレード見るだけならどう?」





見るだけ……ならなんて



厚かましいことを考えたから



私にはバチが当たってしまったのかな。








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