80.Sな彼女とNな彼

間宮実結です。




長年付き合って



結婚を意識していた彼氏に



振られました。




ん?私が振ったのか。




いえ、振られたも同然。




とにかく彼氏と別れました。





失恋の傷は次の恋で癒やせると



昔は思ってたけど



大人になると失敗が怖くて



踏み出すのが難しくなります。




友達と会う気力もなく



空っぽになった心を埋めるには



仕事ですよね。







「おはよう、マミヤちゃん」




「おはようございます」




西川さんが私の可愛い後輩を押し退けて



隣に座る。



お馴染みの月曜日はいつもと変わらない。




「マミヤちゃんがポニーテールなんて珍しいなあ」




高い位置で結んだ髪を引っ張る。




「気安く触らないでください。髪を触るなんて言語道断です。セクハラで訴えますよ」




キッと睨み付けると



笑って切り返すはずの彼が



真顔でこちらを見ていた。




「マミヤちゃん……」




「な、何ですか」




「何かあったん?」




見透かされたようで



ドキリとした。




「何もないですよ。私に何があるっていうんですか。何でそんなこと言うんですか」




彼がふっと笑う。




「言い方にトゲがあるし、いつもより無駄に言葉数が多いやん(笑)」




いつも通りにしているつもりなのに



どうしていつも通りにならないんだろう。




「そうですか?私急ぎの資料作成があるので喋りかけないでもらえますか」




パソコンに向かって


文字や数字を無心で入力していく。




その手の甲に付箋メモがペタッと貼られた。





『次のデートはいつにする?』





「しませんよ!もう邪魔しないでください!」





私は仕事に生きると決めたのですから。











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