75.Sな彼女とNな彼

『起きてる?』





えっ?西川さん?!




思わず後ろを振り返った。




人の姿はない。





『起きてますよ』




落ち着いて返信すると



秒で次のメッセージが来る。




『電話できる?』




今声を聞いたら



きっと私は泣いてしまう。




『電話は無理です。何か用ですか?』




『マミヤちゃんは今日から盆休みやろ。予定は?』




本当は野本くんと過ごすつもりだった。




『お墓参りに行きます』




当たり障りのない答えで誤魔化したのに。




『彼氏とは会わへんの?』




核心をつかれてしまう。




『会いません』




もう会いました。



会って抱き合ったら気持ち悪くて逃げてきました。



なんて言えるわけない。




『俺は休みなしやねん』




『大変ですね』




『世間が休みやと逆に忙しい』




『そうなんですね』






メッセージが途絶える。





他愛ないやり取りにホッとして



家へと急いだ。





玄関で靴を脱いだところで



『もう寝た?』



と、続きのメッセージが来た。




『もうすぐ寝ます』




『俺今日は事務所に泊まりやねん』




やっぱり会社にいたんだ。




ドキドキと胸が鳴る。




『寝る場所あるんですか?』




『会議室のソファーやな』




『それは……』と私が返信をする前に



続けてメッセージが来た。




『何かわからんけど今日はずっと』




『マミヤちゃんに会いたかった』




『早く会いたい』





ストレートな言葉が胸に響いて



バクバクと心臓が鳴る。






私は西川さんより野本くんを



選ぼうとした打算的な人間だから



真っ直ぐな好意を受け取るには



ふさわしくない。






どう返事をすればいいのか



わからなくて画面を見つめる。





すると



『既読スルーとはええ度胸やな。来週そっちの会社行った時覚えとけよ』



と脅迫文が届いた。





『マミヤちゃんの机にある資料の付箋メモ全部外したるからな!』




なっ?!



小学生みたいなイタズラを!




『絶対にやめてください』





『嫌やったら大人しく俺の夢見て寝るんやで。おやすみ』





笑ってる彼の顔が浮かぶ。




いつもそうやって私の迷いや悩みを


ほぐして軽くしてくれる。





『おやすみなさい』





夢の中ならきっと素直に



私も会いたいって



言えるのかな。











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