13.Sな彼女とNな彼

「彼氏……」




彼が呟いた。




その時。




ガチャッ!




重い扉が開いた。




嶋村さんが顔を覗かせる。




「西川さん、お待たせしました~」




「待たせ過ぎやろ(笑)」と


彼が扉を大きく開いた。




「あっ、間宮さんもいたんだ。二人で何してたんですか~?!」




「何も」と私は扉の中へと入った。




二人も私の後に続く。




エレベーターの中で


彼と嶋村さんの世間話を


ぼんやりと聞いていた。




「舞ちゃんは帰らへんの?」


「今日も絶賛残業ですよ~。西川さんも手伝ってくださいよ」


「俺は新しいサーバー管理室の点検があるからなあ。山田の仕事の出来栄えをチェックせな……」




親しげなやり取り。




フロアに着くと


噂の三鷹さんとすれ違った。




「西川さん」と甘い声で


彼を呼び止める。




「里美ちゃん、もう帰るん?」




「うん。ね、久しぶりに飲みに行きましょ?」




そういう話は外ですればいいのに。




無性に腹が立って


私は聞こえない振りをして


席に戻った。




彼の方を盗み見ると


今度は違う女子社員と話していた。




どんだけ女好きなのよ?!




あ、あんな告白……


真に受けなくて良かった。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る