7.Sな彼女とNな彼

司会やプレゼンは慣れているけど


毎度とても緊張する。




女子アナをお手本にして


作成した原稿を読む。




この会議室は司会の演台の所に


スポットライトが当たるように


照明の調整ができる。




薄暗い部屋でスポットライトを当てられ


新人研修というよりは


結婚式の司会者みたいで恥ずかしい。




そんなこと


誰も気にしてないんだろうけど。




プログラムは進む。




彼の番。




「続きまして、情報リテラシーに関するお話を西川先生お願いします」




私の横を通り過ぎる時


「俺は別に先生ちゃうけどな(笑)」


と笑って呟く。




「西川です。もう皆さんの集中力も切れてるやろうから、手短にしよっか。ほな、資料の一ページ目は飛ばして二ページ目を見て……」




彼の話は人を惹き付け


所々で笑いが起こる。




立ち姿は背筋がしゃんとしていて


真剣に話す横顔はかっこ良かった。




ライトのせいか


茶色い髪は透き通り


全身にラメが掛かってるみたいに


キラキラして見える。




王子って呼ばれるわけね。




私には関係ないけど。




関係ないのに。




目が離せない。




不思議と胸が熱くなって


涙が込み上げてくる。




何だろう、この感覚……。




心が波立つ。




頭の中で声がする。




何……?




目を閉じても


何を言ってるかわからない。




「……以上。質問は~??」




やや大きめの彼の声に


ハッとした。




視線が結ばれる。




外せなくなる。




彼が向き直って


部屋全体を見渡す。




終了の挨拶をして


捌けるまで


時が止まってるようだった。










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