5.Sな彼女とNな彼

「気安く呼ばないで下さい」




胸元の『MAMIYA』と書かれた


社員証を手で隠した。




「マミヤちゃんは新入社員ちゃうよなあ?」




人の話を聞きなさいよ!




「違います。新人研修の司会を新入社員がするわけないでしょ」




せっかく先輩社員っぽく見えるように


白いスーツをわざわざ買ったのに。




「それもそうやな(笑)。それよりプロジェクターの設定を課長に頼まれてるんやけど、どこにあるん?」




キョロキョロしながら


最前列の机や演台の中を探る。




「えっ? 私はプロジェクターに関しては何も……」




何でこの人が課長にそんな事を


頼まれてるの?!





ガチャッと無遠慮にドアが開いて


私と同期の嶋村さんが


プロジェクターを持って入ってきた。




「西川さん、プロジェクター持ってきましたよ~」




「舞ちゃん、ありがとう。この壁がスクリーンになるんやんな?」




前方左手の白い壁を撫でた。




「そうなんですよ~。新しい社屋はハイテクでしょー?」




「建物の場所は分かりづらかったけどな(笑)」




んん?




「嶋村さん、この講師の方と知り合いなの?」




「知り合いっていうか、うちの会社のシステムとかコンピューターの担当さんだよ」




「講師じゃないの?」




聞いた私にコンセントが渡された。




「講師はオマケみたいなもんやから。ほら、マミヤちゃんも配線手伝って」




講師……西川さんは手慣れた様子で


嶋村さんが取りに行ったノートパソコンと


プロジェクターを繋いで起動させる。




真っ白い壁に青白い光が写し出された。




西川さんはパソコンの画面が


スクリーンに映るのを確認すると


「また後で」と部屋を出て行った。




嶋村さんは目をハートの形にして


後ろ姿に手を振っている。




彼は一体何者なの?!













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