46.Sな彼女とドSな彼

「未練がましいなー」




サヤカの様子に溜息をつく。




朝から携帯を開いては


過去のメールを読み返して


小さく溜息を漏らす。




こっちまで暗なるわ。




「消すに消せなくて……つい」




もうふなっきーはええやろ。



だから俺の話も聞いてないねん。




「そんなんばっかしてるから暗いままなんやろ? ええ加減に前見ていかなふなっきーも可哀想やで」




新しい女を見つけてるふなっきーを


思ってても仕方ないやんか。




知らんけど。




「……ですよね」




携帯の画面を見つめたままで


俺の話はやっぱり聞いてないやろ。





「携帯貸して。俺が消したる」




「えっ? や、自分で……」




「無理やって。もうええから俺に任せとき」




サヤカの携帯を奪い取って


ふなっきー専用フォルダを開く。




「ちょ、ちょっと待って……」




すがるサヤカに届かない位置で


携帯を操作する。




「あかんて! 消すで?」




半泣きやけど


これは消してもうた方が


サーヤのためになるやろ。




サヤカが涙目で頷いた。




『フォルダ内全消去?』



OKボタンを押す。




ピーーーという音とともに


フォルダ内が空になる。




「ああ……」




「連絡先も消すで? ええよな?」




「あ、う、はい……」




『船木♡亮太』



真ん中のハートが何かムカつくわ。



消去っと。




「はい。終わり! もう携帯ばっか見んと空を見上げて歩け。とっくに桜も散ってもうたけど」




脱力したサヤカに携帯を渡す。




中を確認した後


少しの間は黙っていた。




「……西川さん、ありがとう。自分では出来なかったです」




「どういたしまして」





怒って文句言うと思ってたら


ションボリしたままお礼を言った。




可愛いとこあるやんか。




どんな好きだった人でも記憶だけでは


思いは風化してくから。




大丈夫。




空を見上げて歩いたら



新しい景色が広がっていく。





俺が言うから間違いない。









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