〜幻〜いつまでも消えない人。
あやめ
第1話記憶
「信行くーん(*´▽`*)」
いつまでも忘れられずにニコニコ笑って手を降る消えない人が俺の心の中でずっと俺の名前を呼び続ける。
「彩ねぇ。。。」
もう、20年前の話だ。俺は22で大学卒業後、すぐに当時付き合っていた彼女を孕ませ、責任を取るために結婚した。その数ヶ月後に子供が生まれ、最初は、戸惑いながらも嫁と二人で娘佳奈を育ててきた。ちょうど娘が、生まれてからというもの、セックスレスになりはじめ、2歳になるぐらいから、嫁は嫁で好き勝手遊んでた。俺は仕事で、毎日一生懸命働いて稼いで養う努力をしていた。
俺は。。。嫁にも相手されず、子供も生まれ、家には自分の居場所がなかった。そこで、遊び相手を見つけたくて出会い系サイトに手を出したのだった。それが、彼女との出会いだった。
いつしか、毎週のように、彼女の家に行き、たまにカラオケで、ラブソングを熱唱しあったり、ドライブしたり、密かに時間を作って遠出したりした。時には彼女の、手料理を食べさせてもらったり。とてつもなく楽しい時間がそこにあり、俺は徐々に彼女の魅力にはまっていった。
彼女に会えない日があると、胸が締め付けられる苦しさがあった。彩ねぇに会いたい。。。
俺の頭の中は、彼女の事でいっぱいだった。俗に言う出来ちゃった婚で、家庭持ちの俺。ホントなら結婚なんて、する気もなかったのが正直なとこだが、男の責任から、逃げるわけにはいかなかった。
ふと、ついつい口走ってしまった。
「俺、結婚するなら、彩ねぇみたいな調理師と結婚したいわぁ。毎日美味しい料理食べれるし、子供にも、食育できるじゃん?」
「え?」
戸惑いながらも笑って
「なにそれー、嬉しいこと言うじゃんっ」と、言いながらも彼女は、キッチンに戻り、料理を再開させた。
料理を作る後ろ姿が愛おしくて、思わず後ろから抱きしめた。
「ちょっとぉ、危ないよ?包丁持ってるんだからぁ。。。」
恥ずかしがる、彼女もお構いなしに俺は、彼女の唇にキスをした。
その後に出された手のこんだ料理。幾度となく俺のために彼女は、一生懸命手料理を作ってくれた。その全てがほんとに、美味しかった。正直な話、嫁が作るよりも断然うまい。流石だと思った。彼女は、自分で料理を作り、提供する小さな店をやりたいと、夢を追っていたのだ。
魚介のペスカトーラ、カレー、豚キムチ、ハンバーグ、生姜焼き、ビーフシチュー、数えたらきりがない。。。。
「ほんとに、彩ねぇの料理は絶品だよねー。マジでうまい!!これとか、絶対うまいっしょ。」
「ほんとにー?たまには、こういうのもいいよね。」
「おかわり!!」
「ハァイ。まだあるよ。信行君の為に頑張ったんだぁ。いっぱい食べてね♡」
幸せな時間。勿論、そのあとはデザートに彩ねぇを頂いたのは、言うまでもない。
たまに、嫁が作る料理を食べると味の違う彩ねぇの料理を思い出す。もう二度と食べることはできないのに。。。「くそっ。。。」
歯を食いしばり、俺は、箸をおいた。
「ごちそうさま。行ってくるわ。」
「え?もういらないの?」
「うん。ちょっと腹の調子悪くて。」
「大丈夫?行ってらっしゃい」
悔しさと、後悔が、俺を締め付けて、離さない。そんな記憶が、いつまでもいつまでも消えない。
ふと、現実を見るとただただ時間ばかりが過ぎていき、俺はもう、2児の父となり、気がつけば子供たちは二人共20歳を超えていた。髪は白髪になり、メタボ体型。完全なおっさんだ。。。
今どこにいますか?今でも元気でいますか?会いたい。。。彩ねぇ。。。
この年になっても、未だに俺の心の真ん中に、いるのはただ一人彩ねぇだった。当時の記憶が、鮮明に思い出される。。。
彼女がなぜ俺の中に居つづけるのか?俺は、何度も何度も忘れようとした。だが、忘れようとすればするほど、彼女の笑顔、彼女の暖かさ、ぬくもり、彼女の歌声、全てがフラッシュバックされて、消すことができないでいた。多分それは、俺の身勝手なことで彼女を傷つけてしまったことへの後悔でしかないのかもしれない。
不倫。という反社会的行為。頭の中では、いけないことなのも、分かっている。だが、それを抑えられる理性が、俺にはなかったのかもしれない。
俺が既婚者と、彼女にバレた時も彼女は、すべてを受け入れ、それでも、罪を犯してでも、この関係を続けたいと言った。彼女が、不倫に対して耐えられなくなり、他に男を作って別れるが、再度、俺じゃなきゃダメだと、戻ってきた。彼女が、夢の為に距離を置きたいと言った時もやはり会えなくなるなんて無理。と何度離れても何度も戻ってくるほど、俺に惚れてくれていた。俺は、なにがあっても彼女が、自分の傍から、離れないと勝手に思い込んでいった。彼女がいるのが、当たり前で、心許して接していた。だが、現実は、守らなければいけない家庭があった。
最後に会ったのは、俺が、26になる少し前のことだ。いつものように二人で、カラオケに行ってお互いの好きなラブソングを熱唱しあった。クサイかもしれないが、歌で、彼女に対する気持ちをぶつけたかった。これは、普段、好きだ、愛してる。そんな女性が欲しがる言葉を俺は、彼女に絶対に言わなかったからだ。言えなかったのかもしれない。ホントに愛してるのは、嫁だなんて。その言葉の重さを知っていて後から言ったじゃない。と言われるのが、面倒だったのかもしれない。でも、彼女は、それを分かっていたのかもしれないが、俺は、ラブソングを歌い続けた。
良いムードになって、俺は、彼女にキスをせがんだ。
「ねぇ、ちゅうは?」
「んー?するよ。」
柔らかい唇が、あたる。俺は、本能を抑えられず、もはやカラオケどこではなくなっていた。
ズボンをおろし下半身を彼女に舐めさせた。彼女は、俺の出した精液を飲んだ。
そのあと大好きっ!満足そうな、幸せな顔だった。
思わず俺も!!言い返して抱きしめた。
ホントに良い関係だった。都合のいい女。俺の時間に合わせるし、わがまま聞くし、優しくいつも笑顔で、迎えてくれる。家庭があるのも理解していたし、女のわがままを言わないし、困らせたりしない。気が利くし求めればすぐ、セックスさせてくれた。ほしい物も、無理をしてでも買ってくれた。俺は、ホントに愛されていたのだ。
帰り際、俺の家庭の話になったのが、ホントに別れることになるとはその時は思いもしなかった。
何気なく子供の話になった。
「お小遣い制だから、まじ、今月きついんだよね。しかもさぁ、そろそろ二人目作る?みたいな話になってるしね。」
「あー。。そだよね。一人じゃ、可哀想だもんね。」
「そうなんだよね。兄弟いないと可哀想じゃん?」
「あたしンちのお兄ちゃんの子供も、そんなこと言ってるみたいよ。」
「嫁は3人は欲しいらしいんだよね。」
「そかぁ。。。」
そのあとは別れ際にキスをした。
いつものようにまたね。そう言って。または、もうないのに。。。
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