03-10
「素晴らしい」
一週間ぶりに裕哉の家で、顔を合わせた真白は出会い頭にそうつぶやいた。余計なことにとても色っぽい声で。うっとりしてるとはこの状態のことで間違いないだろう。
「なにが?」
全く思い当たる節のない言葉。
「ゆうとかず、公認カップル」
「なってない」
「そう照れんでもええやないか」
「当事者だろうが、認めんな!」
「美形は許される」
「なにを?」
「全部」
「そんな決まりはどこにもない。あっても、それはおまえの頭の中だけだ」
「じゃあ、脳内でカプ成立」
嬉しそうに言葉多く語る真白。こんなに話すやつだとは思わなかった。この家に来て、裕哉との間をどう保っていたのか気になっていたが、そういうことだ。
嘉寿の口から、思わずため息が漏れる。
真白は、くいくいと嘉寿の服の裾を引っ張ると、子どもの様なきらきらした目で「受け? 攻め?」と聞いてきた。
どういうことかと、裕哉に視線で助けを求める。
「え、わいとカズのどっちが受けか攻めかちゅうこっちゃ」
「それがわからないんだ」
「どっちが、リードする関係、というんかな? まあ、どっちが女役? みたいなもんか」
言いながら得心していく裕哉。なんとなく、見えてきたが、それは不快なのものだった。
「それは、おまえの頭の中だけにして、絶対口に出すな。なんだって、オレが同性愛者にならなきゃならないんだ」
「美形の宿命」
鼻息の荒い真白の言う美形という言葉に褒められたという感覚はついてこない。むしろ遊ばれている気さえする。
「ところで、今日呼ばれた理由はなんだ?」
「理由がなかったら幼なじみ呼んだらあかんの?」
嘉寿は言葉ではなく、鋭い視線で応えた。
「相変わらず、怖いやんね。今週の日曜に別のイベントがあるんやけど一緒に行ってみぃひん?」
「あん? なぜ、オレがオタクどもの群れる場所に好きこのんでいかなきゃならないんだよ?」
「予備訓練みたいなものや」
「行かん」
そう突っぱねた。
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