カノジョは輪廻転生してる

美梨

第1話

僕は引越しをした。幼い頃から転校ばかりだった僕は荷物をまとめるのには慣れていた。ただ、今回の引越しには理由なんてない。強いていうなら、空気を変えてみたかっただけかもしれない。ただ、理由はなくても意味があるような気がしていた。それもただの錯覚かもしれないが。

僕が選んだ部屋はどこにでもあるようなマンションの角部屋。いつか一軒家に住んでみたいものだ。着いたのは夜だったので、とりあえず、お湯を沸かす電子ケトルとコンビニで買った塩味でのカップ麺を無造作に取り出す。携帯を操作しながら手際よくカップ麺を作った。3分経ったのでズズッと麺をすすったら塩味が嫌に安っぽく感じた。結局は何も変わっていない。部屋を変えても生活なんてそんな簡単に変わるわけではない。何かを変えたかった為の引越しは部屋を変えただけで終わりそうだ。

朝、顔を洗って身支度を整える。今日は有給を取っているので会社は休みだ。隣の住人達に挨拶に回るのだ。

一軒目は若い夫婦と小さな赤ん坊。二軒目は中年夫婦。といった具合に続く。ようやく、最後の家にたどり着く。

チャイムを鳴らすと、若い女性が出てきた。すっかり社交辞令となった「お隣に引っ越してきました」という挨拶を交わすと、彼女は微笑んだ。その後は…確かたわいもない話をしていたら、昼食時になったので、別れたと思う。

ただ一つ、今も鮮明に覚えているのはカノジョはその頃からとても綺麗でちょっと不思議な魅力のある女性だったとうことだ。

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