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ノワールと黒ぶちのチャッピーは無言のまま月の下を歩いていた。


歩いているだけでノワールの凛とした空気が漂っているような錯覚に陥ってしまう。


普通の猫ならば空気に当てられて小さくなるところだが、チャッピーは鈍感なのか肝が据わっているのか平然とノワールの後ろをついていく。


「…ユキとタマの気持ちが分かる分、選ぶのはつらいものだ」


「そうですねー」


ぽつりとノワールが呟いた言葉に返事をするチャッピー。


再び訪れる沈黙を二匹は居心地が悪いとは思わない。


この距離感こそがお互いに信頼し、任せている証だと以前にノワールが他の猫達に言っているのをチャッピーは知っているのだ。


「優しい貴方だからこそ、皆の先頭に立っていられるのですよ」


月の光を浴びる気高きノワールにそう言葉をかけると、チャッピーは優しい目線を送った。


その時だった。


にゃーっとどこからか危険を知らせる泣き声が二匹の耳に届いた。


かっと目を見開き瞳孔を細くするノワールに合わせるかのようにチャッピーの瞳孔も細くなる。


「向かうぞ」


「はい」


力強く塀の上を駆け出していく二匹の姿はあっというまに暗闇へと消えていった。

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