第54話 暴走
うさオークは解き放たれると同時に走り出す。案外従順なやつである。顔はあんなに不気味なのにね。アレッサちゃんと過ごす内にあいつも何か変わって来たのかも知れない。でも病に呪い……やっぱりイマイチよくわからない。それに例えそんな事が出来るのだとしたら、それを成せる奴なんてそうそう居ないのでは無いだろうか?
つまりは強敵。自分達がどうにか出来る相手では無いかも知れない。ここが他の村とは違って現在進行系で犯されてるのなら、ここにこの病を広がらせた張本人がいてもおかしくないんだ。
「とりあえず町の人達を見つけたい所だよな……協会が怪しいんだが」
協会は町の中心方面にある。大体いい場所に協会はあるからな。神聖な協会まで瘴気に包まれるなんてよっぽどだ。神の加護を受けてると言われる協会には普通瘴気的な物は弾かれる物なんだが……ここの協会の神聖ささえも塗りつぶす程の瘴気と言う事だろう。
「中は流石に大丈夫だと……思う」
「でも自分達が近寄れなくないか?」
中までは流石に瘴気の影響はないとメルルは言うけど、そこまでたどり行くことが自分達には不可能だ。うさオークや、ブリンならどうにかイケるかもだが、ブリンとかだと、絶対に敵だと思われるだろう。一人では他の人と接触出来ないのはネックだな。
「ブリンに行って貰って……手紙を射し込むとか?」
「なるほど、確かにそれでやり取りくらいはできるか」
生きてる人がいれば……だけど。自分達が近づけない以上、その手でいくしかない。
「ブリン頼めるか?」
「ばかぜとけ」
頼もしいやつである。ブリンとかだって影響を受けないわけでは無いんだけどね。自分達よりは耐性があるってだけだ。それでも許容量ってのは多分ある。だからうさオークの奴が帰ってくるまでは待った。アイツが返ってこれないのなら、ブリンでも無理だと言うことだからだ。しばらくすると扉がダンダンとされる。うさオークだろう。あいつは扉開けれないからね。
扉を開けて招き入れよう……と思ったら、バコンと扉が破壊される。いやいや、あいつやり過ぎだろ……と思ったら、なにやら様子がおかしい。
「グルルルルル」
そんな風に唸るうさオーク。その身体には紫色の瘴気がまとわりついてる。そして目は赤く輝いてた。
「まさか……」
「瘴気に当てられて正気を失ってる……ダジャレじゃないからね」
わかってるし、誰もそんな事思ってないから。てかそんな事を言ってる場合ではない。うさオークを正気に戻さないと。殺すだけなら簡単だ。今のうさオークに力はあんまりない。普通のウサギよりは強いかな程度。けどあれはアレッサちゃんのお気に入り。簡単に殺すなんて選択肢は獲れないんだ。助ける――それが第一目標だ。
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